私たちの内にある宇宙

ジューン・ミッチェルは、世界に平和を築きたいなら、私たち自身の内面に平和がなければならないと考えます。

翻訳:佐藤 靖子

先日、私はフランス南西部のプラムビレッジのアースウィーク (Earth Week) に参加しました。このコミュニティは 1982 年、中央ベトナム出身の科学者であり平和活動家、詩人、文筆家、そして僧侶であるティク・ナット・ハンにより設立されました。そこはドルドーニュ川とガロンヌ川に挟まれた肥沃な丘の中にあるアースウィークにぴったりの場所で、アスパラガス、プラム、りんご、ぶどう、ひまわり、コーンなどが豊かに実っていました。私たちの多くと同じように、200 人の僧侶と尼僧、それに在家の人々からなるプラムビレッジのコミュニティも、気候危機の時代に自分たちにもっと何ができるだろうかと自問していました。アースウィークに、このコミュニティはエクスティンクション・リベリオン (Extinction Rebellion)、エコビレッジの住人、学校ストライキをしている学生、トランジションタウンの活動家、それに北アメリカの先住民コミュニティのメンバーなどを招待しました。

 ティク・ナット・ハンは平和と許しの教えで世界的に知られています。それは、人と地球に対する親切で思いやりのある行動を今しっかりと実行することで、過去の暴力を償うことができる、というものです。著書の「Love Letter to the Earth(地球へのラブレター )」の中で、ティク・ナット・ハンはあらゆる生命の源と密接な関係を構築することを熱く呼びかけています。ティク・ナット・ハンの名前は「一つの行動 (one action)」という意味を持っていて、彼が選んだ行動は平和でした。一方、彼は共に在ること (interbeing) の教えでも同じくらい有名です。その教えとは、私たちはみな関係しあっているというものです。私たちは宇宙から生まれ、そして私たちの中に宇宙があります。私たちは相互に依存していて、月や太陽、星々、地球、そして生物・無生物を含むあらゆる存在から分離しておらず、分離することはできません。私たちは全ての自然と相互に存在し合っています。私たちは存在の海に漂う波なのです。

 ティク・ナット・ハンは、メディテーションの過程を果肉で濁ったリンゴジュースの入ったコップに例えました。そっとしておけば、20 分もすれば透き通っておいしそうになります。私たちは行動を起こす前にリンゴジュースのようになり自身を静める必要があります。メディテーションは座りながら、歩きながら、食べながら、仕事をしながら実行できます。私はアースウィークの中で、沈黙の実習や、ディープリラクゼーション、歌、演奏は、私や他の人たちを革新的な効果を与えることを確信しました。私たちは、ティク・ナット・ハンの教えの真実を目の当たりにしていました。それは次のようなことです。世界に平和を築きたいなら、私たち自身の内面に平和がなければなりません。相手との調和を望むなら、自身の中に調和が必要です。相手に親切にしてほしいなら、愛のある親切を実践する必要があります。外面と内面の世界は密接につながっているのです。

 何年もの間、コミュニティでは「リデュース、リユース、リサイクル」の理想を試みてきました。週に 1 回の車を使わない日 (No Car Day)、電気を使わない夏の夕べ、完全にヴィーガンの食事といったことです。コミュニティのメンバーはいつも熱心に野菜やハーブや花を育て、たくさんのプラムの木を植えてきました。また、ここ数年でハッピーファーム (Happy Farms) を構築し、パーマカルチャー、アグロエコロジー、有機栽培の方法を実践して模索しています。訪れる全ての人が、精神的な経験として畑仕事などのコミュニティ活動に参加するよう求められます。プラムビレッジでは、「働くことは祈ること」なのです。

 ティク・ナット・ハンの教えは、短い 2 つの文に要約されます。「到着した。今ここに。(I have arrived. I am home.)」この 2 つの文を通して、コミュニティのメンバーは足るを知ること、そして今ここで完全に生きることについて沈思黙考します。プラムビレッジの大きな貢献の 1 つは、自分と他者の精神的生活を育みつつ、人や地球への配慮や思いやりを実践するよう、仏教徒もそうでない人も分け隔てなく感化していることです。

ジューン・ミッチェル (June Mitchell) はシューマッハカレッジで気功とメディテーションを教えています。プラムビレッジについては www.plumvillage.org をご参照下さい。

The Cosmos Inside Us • June Mitchell

If we wish to make peace with the world we need inner peace

319: MarApr2020 

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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