VEGANUARY を超える長き旅

マリアン・ブラウンはテレビ司会者のクリス・パックハムと話します。

翻訳:沓名 輝政

クリス・パックハム (Chris Packham) は、イングランド南部のニューフォレストからスコットランド高地のインヴァネスへの壮大なドライブに旅立つところで、インヴァネスで BBC のオータムンウォッチ (Autumnwatch) を収録することになっています。彼は車の中にたくさんの本を載せていて(ゆえに電車に乗れないと言う)、彼の隣の助手席にはヴィーガンのエナジーバーの山を置いています。彼の眼前の厳しい 10 時間の旅にもかかわらず、彼の見通しは楽観的です。 「オーディオブックをいくつかダウンロードしてあります」と彼は言います。

 旅行習慣を変えること(長距離飛行と比べて足が出る部分を自分のポケットマネーで埋め合わせて、同僚が同じことをしないなら飛ばないように脅すつもりだと言います)は、パックハムが昨年行った唯一のライフスタイル調整ではありません。ソーシャルメディアの多大な宣伝に応じて、彼は 2019 年の Veganuary [ Vegan(ヴィーガン)」+「January(ジャニュアリー)」で 年初 1 月の 1 ヶ月間はヴィーガンになる活動] でヴィーガンへ踏み出す 25 万人以上の人々に加わり、それ以来、堅持しています。明らかに難しいことではないようです。 「渇望したかと言えば、しなかったです。私はそのような人ではありません」と彼は出発準備を終えてすぐにリサージェンス&エコロジストに語りました。 「仕事のために 3 月に 3 週間メキシコに行きました。ヴィーガンフードを見つけるのに苦労しませんでした。ご飯、アボカド、サラダを食べました。ただ、3 週間それだけを食べました。結局、まったく同じものを食べてうんざりしていました。心理的に「くそー」と思ったのはそれだけでした」

 ヴィーガンの軽食、材料、レストランでの選択肢を見つけるのは簡単だったと彼は言います。 Veganuary の統計によると、他の参加者も同様の経験をしました。 60% が、チャレンジは予想よりも簡単であり、ヴィーガンにとどまると決めた人の 51% は「おいしい料理の発見」に影響されていると感じていました。

 レストランチェーンとスーパーマーケットが波に乗り、グレッグスのヴィーガンソーセージロールとピザハットのヴィーガンピザの販売がキャンペーン中に急増したと伝えられています。 しかし、ヴィーガンにやや安易になっているのでは? 思い入れのある努力がないと、一時的な状況だったと言う結果になりませんか? 「私たちは即応的な時代に生きています」とパックハムがは答えます。 「容易でなければ、人々はおそらく挑戦したがらないでしょう。」

 動物福祉に加えて、パックハムは環境危機を主な理由の 1 つとして挙げていて(32 ページの「An Alternative Worldview」をご参照)、彼はヴィーガンになることを決めました。消費はこの危機を助長する経済システムの中核にあるので、企業がトレンドを活用し、「ヴィーガンになる」という消費が、抜け道として見られるという問題はありませんか? 「現時点では、ヴィーガンに取り組んでいる企業を奨励する必要があります」とパックハム氏は言います。 「対処すべきもっと大きなことがあります。それは肉の食べ過ぎです」

 とはいえ、ヴィーガンになることは即座の解決策ではないと彼は付け加えます。多くのヴィーガン加工食品にはパーム油が含まれています。パーム油は、世界で最も生物多様性の高い地域の森林破壊の主な原因となっています。 「また、指をクリックしてみんなが一夜にしてヴィーガンになるという考えは、この惑星にとって害悪になるでしょう」と彼は言います。 「現在、英国では、環境負荷の低い有機栽培農場は良好な福祉基準などで飼育する家畜と組み合わせていて、生物多様性を維持するために非常に重要です」彼が見たいくつかの農場は、国立公園よりも多くの生物多様性があると彼は言います。というのも、野生生物のために管理されているからです。「もし私たちが野菜のみの食事が欲しいと言うなら、英国で栽培されている野菜のほとんどは集中的な農業の下で栽培されており、野生生物にはまったく良くありません。 パックハムは、農家から直接購入し、可能な限りスーパーマーケットを避けることを提唱しています。 「スーパーマーケットに問題があります。特に英国では、環境被害に関しては罪に値します」と彼は言います。 「ポイントは、彼らが価格を固定することで英国の農業を麻痺させていることです。彼らが輸入しているのは、この国で私たちがはるかに少ない二酸化炭素排出量で生産できる食物です。」

 彼は、この提案には懐疑的な見方もあると認めています。「中には私にこう言う人もいて、何度も耳にしますが、『あなたは大丈夫なんでしょ。払う余裕があるんでしょ』そういう販売店の食べ物はスーパーマーケットよりもはるかに高価だからです」彼らは要点を心得ていると思いませんか?と私は尋ねます。「私たちは皆違います。時にはそれは精神的な態度の問題であり、時には文化的なものであり、時には経済的なものです」とパックハムは言います。 「この国には、フードバンクに依存している人が非常に多すぎます。それは非常に大きな社会的犯罪です」そして事態は悪化しています。英国全土に 1,200 のフードバンクを運営する Trussell Trust によると、2018 年の同時期と比較して、2019 年 4 月から 9 月にかけてフードバンクの使用が 23% 増加しました。明らかに、誰もが選択できるわけではありません。「しかし、あなたが選択できる人なら、それを行使してください」とパックハムは言います。

 私が最初にパックハムにインタビューしたのは 2019 年の初めで、彼は年老いたミニチュアプードルであるスクラッチーと共に獣医を訪れて帰ってきたところでした。 10 月にスクラッチーが他界し、残されたパックハムは打ちひしがれました。彼とそのパートナー、シャーロット・コーニーは、Wight Zoo(ワイト島動物園)を経営しており、スクラッチーの親戚のうち 2 匹(何となくシドとナンシーと名付たとのこと)を連れて帰ることにしました。 パックハムは、自分の犬にヴィーガンフードを絶対に与えず、ペットフードにはかなりのカーボンフットプリントがあるとコメントしています。 (314 号の「Wake Up, Conservation Movement!」をご参照)犬に肉を食べさせている場合、あなたは倫理的な犬の飼い主になれますか? 「ペットフードと缶詰ペットフードの環境への影響について、少し前にツイートしました。それは災いを招き、まったく破壊的です」と彼は言います。 「私は犬や猫の飼い主を指差してはいません。彼らは本当にそのことを知らないからです。彼らはただそれが副産物だと思っていますが、それが被害を招くのです」 では、彼は何を彼の犬に与えているのでしょうか?彼は言います。「私はペットに生の餌を与えています。食品はオーガニックで、オーガニックの副産物を入手できるサプライヤーが多数あります。私はそれを地元で調達する肉と混ぜています。だから、犬たちは、地元で間引かれる鹿の肉や小片を一緒に混ぜたものを食べています。」

 変化が必要ですが、人々は異なるペースで着手していると彼は言います。 これまでのところ、パックハムは電気自動車を注文し(そして、まだ届くのを気を揉んで待っています)、グリーン電力事業者に切り替え、飛行機旅行と食事にも対処しています。 「ちなみに、私はそれが正しいと言っているわけではありません。私がここにおいているのは、[エナジー] バーで、すべてビニールで包まれています。 あなたは私にこう言えそうですね。なぜあなたの庭で育った 4 つのリンゴをそこに置いていないのですか? とね。まあ、個人的には果物を食べません。 私は果物を食べないヴィーガンです。 分かりますか? 私たちは持ちつ持たれつでなければなりません。私たちはお互いに励まし合う必要があるのです」 その後すぐに別れを告げ、彼が旅を続けるのを見送りました。

マリアン・ブラウン は、リサージェンス&エコロジスト誌の編集者です。

定期購読はこちらからどうぞ。

318: Jan/Feb 2020

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

0コメント

  • 1000 / 1000