落ち着いてゆっくりと

翻訳:佐藤 靖子

 成長。ほとんどの文脈において、これは美しいものです。この雑誌を読んでいる読者で、ドングリから緑の芽が出ているのを見て不思議さを感じない人がいるでしょうか?でも人間と違い、木は成長の限界を知っています。ペーター・ヴォールレーベン (Peter Wohlleben) は著名な著書「The Hidden Life of Trees(樹木たちの知られざる生活)」の中で、母木が森の地表面に生える自らの子孫にどうやって日陰を作り、光の 97% を遮断しているかについて述べています。こうした光の遮断によってゆっくり成長することで、幼木の幹はより丈夫でしなやかになり、暴風雨や菌による攻撃への耐性が強くなります。

 では、私たちは、どれくらいゆっくり成長するべきでしょうか?

 リサージェンス & エコロジストの本号では、現在の経済システムに代わる経済システム ― 脱成長 ― について深く掘り下げて見ていきます。理論を分析し、「脱成長の生活」を生きることが実際どのようなものなのかを考えます。その中で、グリーン・ニューディール政策について考察し、ワスレナグサとロバに出会います。

 現在の経済システムから私たち自身をデトックスするには、想像を膨らませる努力が必要です。基調のコーナーで、トランジション・ネットワークの共同創立者のロブ・ホプキンスはこのテーマを考察し、全てが上手くいっている世界をなぜ私たちみんなが想像する必要があるのか論じています。政策立案者らが今年の 12 月に国連気候変動枠組み条約第 25 回締約国会議 (COP25) をチリで開催する時にも、想像の前向きな力が光を放つことを祈るばかりです。

 本号ではまた、ミッチ・アンダーソン (Mitch Anderson) がアマゾンから待望の良いニュースを知らせてくれます。サーシャ・ドヴズク (Sasha Dovzhyk) はチェルノブイリの生きた遺産について考えます。芸術のコーナーでは、サラ・コーベット (Sarah Corbett) がお祝いの季節のクラフティビズムのこつをシェアし、世界的評価を受けている芸術家、オラファー・エリアソン (Olafur Eliasson) が危機の時代の芸術と希望について語ります。

 北半球の冬は一般的に成長に関与する時期ではありません。ですから、暗闇が居座り始め、今年の木の葉が足元の土の新しい層になる今、おそらく私たちは立ち止まって考えるべきです。もっと大きく、もっと早く、もっと高くと生きる代わりに、未来の世代のためにエネルギーを節約し始めることができます。

マリアン・ブラウン は、リサージェンス&エコロジスト誌の編集者です。

globalclimatestrike.net

tinyurl.com/popping-rhubarb

317: Nov/Dec 2019

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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