地球のために立ち上がる

サティシュ・クマールが最近の積極行動主義から刺激を受けています。

翻訳:佐藤 靖子

大きな変化の気配が漂っています。流れはゆっくりですが着実に私たちの望む方向に向かっています。サステナビリティ、スピリチュアリティ、気候の安定化、地球への配慮における世界のムーブメントに欠くことのできないものとして、リサージェンス誌は意識の転換を促進してきました。これが今では学校ストライキや絶滅への反逆 (Extinction Rebellion) がリードする急進的な積極主義行動に表れています。彼らの真摯で無私の犠牲の精神は、私の精神を大いに高揚させてくれています。

 歴史上の大転換は全て、洞察力を持った人物が人類全体の利益のために自らを捧げることで起こっています。英国で女性参政権を確立すべく、エメリン・パンクハーストのリーダーシップの下、1000 人以上の女性が投獄されました。マハトマ・ガンジー、マーティン・ルーサー・キング、ローザ・パークス、ネルソン・マンデラ、バートランド・ラッセルらはみな、人類の自由や生命の尊さ、世界の平和など、大いなる理想のために戦うため投獄されました。

 「絶滅への反逆」の勇気ある活動家らは人類の偉大な英雄の足跡をたどっています。自らの信念に従って行動する彼らに敬意を表します。

 同様に、私が大いに鼓舞されたのは、若いスウェーデンの活動家、グレタ・トゥーンベリです。この 16 歳の活動家は、類い稀なる叡智と、素晴らしい洞察力を持っています。そして、彼女に触発され、世界中の何百万もの若者が「Fridays For Future(未来のための金曜日)」運動に参加し、学校ストライキを行っています。私たちのふるさとである地球が深刻な危機的状況にあるなら、彼らにとって学校教育はただ何の役にも立たないのです。グレタと仲間の生徒らは、大人にエコロジーについて教え、行動を起こすよう迫っています。こうした若者は政治家や実業界のリーダーらに希望という空っぽの言葉を超えて直ちに行動を起こし、炭素排出から炭素隔離に移行するよう要求しています。

 これに後押しされるように、メディアや政治家は絶滅への反逆や学校ストライキの行動に対し肯定的な反応を示しています。英国の下院は環境と気候の非常事態を宣言し、この歴史的な宣言はほぼ全会一致で採択されました。庶民院議長や労働党党首、環境・食糧・農村地域大臣らはグレタ・トゥーンベリを歓迎しました。また、グレタはダボスや国連での実業界リーダーのエリート層の会合でもスピーチを行いました。

 2019年3月、世界の 2,000 以上の街で学校ストライキが行われました。5月24日には 2 番目に大きな規模の学校ストライキが 100 か国以上で行われました。何百万もの生徒が抗議デモを行い、地球が気候の緊急事態に直面していることを世界に喚起しました。別の大規模ストライキが2019年9月20日に行われます。ストライキを行っている生徒は、全ての生きとし生けるものに適した未来を構築するため、あらゆる年代の人々にこの日の行動に参加するよう呼びかけています。

 これまでのところ政治家や実業界リーダーは単に前向きな言葉や決まり文句で応えていますが、これは正しい方向に向かう第一歩です。今や、彼らに政策や慣行の説明責任を果たさせ、それらを変えさせるのは一般の人々にかかっています。政治家は自身の言葉に従って行動しなければなりません。

以下に政府による緊急行動のための 7 つのシンプルな提案を示します。

・エネルギー使用と二酸化炭素排出を減らすため家や事務所、公共施設を断熱する。

・固定価格買取制度を復活させ、再生可能エネルギーへの投資を優先させる。

・直ちにフラッキング(水圧破砕法)を止める。

・ヒースロー空港の第 3 滑走路の建設計画を含む、全ての空港の拡張を取りやめる。

・広大な新しい森を作り、既存の森林を保護する。

・人々にもっと植物ベースの食事を取り入れ、有機農法を支援するよう促す。

・今すぐ使い捨てプラスチックの生産と使用を減らし、2 年以内にそうしたプラスチックを全て禁止する。

 10 代の活動家であるグレタ・トゥーンベリが若者たちに発言の機会を作ってきた一方、93 歳のデイビッド・アッテンボローは高齢者の懸念をはっきりと表現しています。自然史番組のこのマスタープレゼンターは地球の窮状について曖昧な言葉では語りません。気候崩壊の現在と喫緊の危険に関する彼の卓越したテレビドキュメンタリーは、問題を隠そうとしてきた多くの人々を目覚めさせました。この尊敬を集める科学者であり象徴的な自然主義者である彼が発する言葉は、快適なぬるま湯に浸かって生きている人々への警告です。

 こうした現在の進展は、私たちみんなにとって励みの源となります。私たち世界中の人々は無関心から抜け出し、自分たちにできる何らかの方法で運動に参加しなければなりません。そうすれば、地球と人類はこの先何百万年も調和して生きることができます。

 気候危機に対処する運動の背後には、2 つの動機があります。それは、人類の文明の終焉に対する恐れと、地球と人類に対する愛です。もちろん、恐れの力はとても強く、それも役立ちますが、私にとって愛の力はそれよりも力強いものです。ですから、気候の安定性をもたらす私たちの運動を恐れの力ではなく、愛の力で動かしましょう。

 こうした状況下で、リサージェンス・トラストの務めは今、かつてないほどに緊急を要しています。私たちは意識の転換の一端を担ってきましたが、これからも尽力してこれを継続していきます。この先何年も何年も、積極的に取り組んでいくことを堅く約束します。そして、私個人としては、人生の最後の瞬間までエコロジーとスピリチュアリティの再生に取り組むことを誓います。

サティシュ・クマールはリサージェンス・トラストの名誉編集者。新刊の『Elegant Simplicity: The Art of Living Well』はリサージェンスのオンラインショップで購入可能です。詳細は www.provisiontransylvania.com へ。

Stand Up For The Earth • Satish Kumar

316: Sep/Oct 2019 

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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