...何が戻るのか

陸上と海上の再野生化(リワイルディング)サークルや取り組みから明確なメッセー ジがあるとすれば、それは、自然はチャンスさえあれば、人間によって損なわれた生態系を回復し、永久に失われたと思っていたもののいくつかを、再野生化された地域に戻してくれる、という喜ばしいメッセー ジだ。

 英国に春が訪れるのを祝うのに、これ以上のメッセージはない。そこで今号の特別テーマは、「想像しよう...何が戻るのか」だけでなく、あまり知られていないリネーチャリング(renaturing)の取り組みも祝うことに捧げる。

 3月20日は世界再野生化の日。今号では、環境ランドスケープ・アーティストのゲイリー・クックが、ノース・ヨークシャーの地所ブロートンにビーバーが最近再導入されたことについて、所有者であるロジャー・テンペストとともに語っている。ロジャー・テンペストは、この歴史的な地所の3,000エーカーの大部分を自然優先のために再野生化したことで、殺害予告を送られたこともある人物だ!

 私たちの多くは今、さらに北にあるスコットランドに再野生化のヒントを求めている。スコットランドでは400年ほど前、ビーバーが狩られて絶滅の危機に瀕していた。2008年に始まった科学的モニタリングによる再導入プログラムの結果、現在では推定1,500頭が生息している。

 スコットランドは現在、英国の4つの国家の中で最も自然が枯渇している。2024年末、20以上の団体からなるスコットランド再野生化同盟(Scottish Rewilding Alliance)は、スコットランド政府に対し、国土と海域の30%を自然再生し、2030年までにスコットランドを世界初の再野生化国家(Rewilding Nation)にすることを宣言するよう求める「再野生化国家憲章(Rewilding Nation Charter)」を発表した。

 そのわずか数ヶ月前 Scotland: The Big Picture という団体がパースで1日会議を開催し、ノルウェーから見たオオカミの再導入や、身近なところではシェトランド諸島沖でのシャチ[学名:Orcinus orca]の目撃情報など、さまざまなトピックを探る刺激的なスピーカーの顔ぶれが揃った。

 慈善団体 Curlew Action の創設者である活動家のメアリー・コルウェルは、エコロジカル・グリーフ(生態学的悲嘆)に関する感動的な講演で会議の幕を開け、River Revivers の創設者であるダンカンとマーヤ・ペッパー夫妻は、川の野生化に関する専門知識を披露した。

 イベント全体が素晴らしく、世代を超えた多くの参加者たちが、びん詰めにして売りたいような話題を生み出し、何よりも情熱に満ちていた。私たちの地球とそれを共有するすべての人々の福祉に関わるすべての集まりがそうあるべきであり、『‘Why not Scotland?’(なぜスコットランドではないのか)』というテーマを選んだ主催者たちに敬意を表したい(同タイトルの映画は、下記の同団体のウェブサイトから見ることができる)。

 再野生化というトピックに関して言えば、人間の精神とスピリットの現在の、そして集合的な渇望に対するメタファーと象徴が、ここにもたくさんあるのかもしれない。そして、もしこの会議(2年に1度開催される)が明日また開催されるとしたら、私は真っ先に電車の切符を買って、そこに行き、応援するだろう。

www.scotlandbigpicture.com

www.curlewaction.org

www.riverrevivers.co.uk

スーザン・クラーク

リサージェンス&エコロジスト誌の編集者

@susanresurgence.bsky.social

(翻訳校正:沓名 輝政)

リサージェンス&エコロジストは教育慈善団体のリサージェンストラストが発行。詳しくは裏表紙の内側やウェブ www.resurgence.org をご参照ください。コラムで述べられる見識は寄稿者のもので、必ずしも当トラストを反映したものではないこともあります。


349: Mar/Apr25


リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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