ろうそくを灯して...
ある読者が、なぜ私たちは一歩を踏み出し、私たちが今直面している危機に対して責任を追うべき利害関係に本気で挑もうとしないのかとの質問をしたとき、サティシュ・クマールは、本誌を含むザ・リサージェンス・トラストの本来の姿を、タイムリーかつ優しく思い出させて、分かち合ってくれました。つまりそれは、ポジティブさです。
翻訳・校正:林田 幸子・沓名 輝政
サティシュが返信した手紙からの抜粋:
この雑誌は、ひどく親切でいることへの実践練習のようにも見えるし、また、ただ企業の予言者のようにも見えます。それは、いい意味で、いつもどおりの単なるビジネスです。私は40年間瞑想をしており、仏教の哲学にとても共感していますが、これでは強硬な企業世界と戦う助けにはならないでしょう...彼らがグリーンウォッシュの機会を無視しない限りは。
リサージェンス&エコロジストの読者
あなたは、企業資本主義が自然環境や多くの人々に与える壊滅的な影響を当然懸念しています。私はあなたの懸念に同意し、共感しています。
しかし、資本主義によって生み出される問題はよく知られています。
カール・マルクスからジョージ・モンビオットまで、ものすごい数の作家、思想家、活動家たちが、資本主義、企業貪欲、消費主義、その他の不公正なシステムが生み出す問題を浮き彫りにしてきました。問題は十分に文書化され、定義され、理解されています。膨大な数の人々が、今やこれらの問題を認識しているにもかかわらず、資本主義を批判する人々はみな、同じ問題の一部なのです。解決策の一部になろうとする人はごくわずかです。暗闇を呪う人は多いですが、ろうそくを灯す人はほとんどいません。
多くのエネルギーが、暗闇を批評し呪うことに浪費されて、ろうそくを灯すことにはほとんどエネルギーが注がれていません。多くの時間、多くの言葉や思考が問題の批評や分析に費やされ、解決策を見出すことにはほとんど注意が払われていません。
資本主義体制に挑むことに専念した出版物、雑誌、ウェブサイトは数多くあります。そしてそうであるのは当然のことです。私たちはそれらがうまくいくように願います。資本主義や消費主義に対する彼らの議論がより研ぎ澄まされますように。しかし、私たちは解決策に根付いたプラットフォームもまた必要としているのです。企業の消費主義や資本主義に代わるものを示す事例を強調する必要があります。希望と楽観主義が必要です。前向きなアイデアと解決策に目を向ける必要があります。絶望から希望へ動く必要があるのです。
私の考えでは、それこそがリサージェンス&エコロジスト誌の役割であり、エコロジストのウェブサイトの役割でもあります。リサージェンス・トラストの役割は、社会的に公正で、生態学的に再生可能な新しいアイデア、新しい経済学、新しい技術、新しいビジネス、新しい事例を構築することによって、実践の変化を支持し、勇気づけ、奮い立たせることです。
私の考えでは、これが新しい世界観と新しいパラダイムを創造する方法です。人と地球の両方が重要であるという考えに基づいた新しい経済学が必要なのです。エコロジー経済学やドーナツ経済学は、私たちが必要な考えの部分であり、私たちは仕事を通して、単なる考えや理想としてだけでなく、実践的な応用において、これらを支持しています。
他人を批判するのは簡単なことです。大企業は非難されるべきだし、政府は非難されるべきです。私たちは、他人を非難することを心から楽しみ、自分の仕事を果たしたと思えてしまいます!そしたら自分自身は高潔だと優越感に浸ることもできます。そう、もちろん批判するのは良いですが、そこで終わってはいけません。実践に変化をもたらすような新しいモデルや新しいムーブメントを作り出しましょう。
新しいモデルを構築する前に、すべての「旧世界」の産業、企業、ビジネスが変わるのを待つことはできません。古い殻の中で、今すぐ新しい経済モデルを構築し始める必要があります。リサージェンス & エコロジスト誌とエコロジストのウェブサイトはどちらも、そのようなアプローチを奨励し、発見や発展、試みを伝えていく必要があります。この2つのプラットフォームはともに、前向きで建設的で、かつエコロジカルな解決策を支持し、促進するためにあるのです。
もちろん、資本主義を批評するのに非常に良い仕事をする、価値のある、尊敬される出版物は他にもあります、政治イデオロギーの左翼を代表する多くの優れた作家がいるガーディアン紙もその一つです。Red Pepper もまた、批判的思考と情報を提供する素晴らしい情報源です。ニュー・インターナショナリストもまた、旧世界の秩序の欠陥を示す価値のある情報源です。リサージェンス&エコロジストとエコロジストが、同じことをしたり、同じメッセージを重複させたりすることに意味はありません。私たちは、新しい世界の秩序を創造することに取り組んでいる世界中の素晴らしい先駆者たちについて読者に知らせることで、両誌を完全なものにしています。私たちは彼らに敬意を表し、彼らを讃え、彼らを熱心に見習います。
これらの先駆者たちは、有機農業、ホリスティック教育、地域経済、再生可能エネルギーシステム、再野生化、循環型経済、大地再生ビジネスなど、多くの分野で活躍しています。主要なメディアは彼らをまったく無視しています。彼らが直面する多くの困難や課題にかかわらず、彼らの活力、強さ、勇気、関連性、回復力を伝えることは、リサージェンス・トラストの神聖な義務なのです。
こういった考え方が、私たちの立場をよりはっきりとさせるために、いくらか助けになることを望んでいます。このアプローチに賛同していただけないかもしれないことは十分に理解しています。しかし少なくとも、私たちがリサージェンス&エコロジストとエコロジストの両誌において、単に資本主義システムに不平を言っているのではなく、より建設的でスピリチュアルなアプローチをどうして追求しているのかについて、温かくご理解いただけたらと思っています。
サティシュ・クマールの新作、Radical Love は、2024年9月5日にロンドンのカーゾン・ブルームズベリー・シネマ内の Bertha DocHouse でプレミア上映され、その後サティシュとのQ&Aセッションが行われます。
サティシュ・クマールは、リサージェンス & エコロジストの名誉編集者です。
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