全てを変える
ナタリー・ベネットは、新著『Change Everything』の序文で、政治とは「何をされたか」ではなく「何をするか」であるべきだという核心的な信念を語っている。そして、誰もが政治を「する」ことができると彼女は言う。
翻訳・校正:沓名 輝政
本書は、グリーンの哲学を表現したものであり、ユニークで完全なシステムが実現しうるもの、すなわちビジョンを示したものだ。
緑の党の党首として、私はよく『あなたは社会主義者ですか』と聞かれたり、「スイカグリーン」と非難されたりした。時には果物の比喩が行きすぎることもあった。マンゴーの緑、ほうれん草の緑......奇妙なスムージーができるほどだ。私の答えはいつも「ノー」だった。
イングランドとウェールズの緑の党の哲学的基盤にあるように「経済と環境の正義は不可分です」。事実上、世界中のすべての緑の党は、従来の枠組みでは政治スペクトルの左側に位置している。しかし、緑の政治理念は、社会主義よりも現状からはるかに遠いところにある。それは、19世紀ではなく、21世紀の現実を中心に構築されている。
なぜ社会正義がグリーンなのか?
首尾一貫した右派のグリーン政治哲学などありえない(しかし、破壊の根本的な原因を理解せずに種や生態系の保全に賛成することは、保全主義であって政治体制ではない)。
英国では毎年、惑星3個分の資源を使っている。まず、一つの惑星での生活に戻らなければならない。しかし、もし「全員が3分の2まで削減する」という方向性であれば、多くの人々が死んでしまうことになる。すでに冬に暖房を切り、電気代が払えないために震えている人たち、子供たちが食事ができるようにと食事を抜いている人たち。
つまり、現在大量に消費している富裕層は、消費を大幅に減らさなければならない。今、多くの人々が必要としているのは、より多くの資源へのアクセスであり、特に、食卓に食べ物を並べ、屋根のある生活を送れるという確実な資源へのアクセスである。それはイギリス国内でも言えることで、世界規模になれば、さらに大きな意味を持つ。この地球上には、公平に分配さえすれば、誰もがまともな生活を送り、気候や自然を回復させるのに十分な資源があるのだ。
世界の共創
グリーン・ポリティクスはまた、政治的リーダーシップがどのようなものであるかについても、異なるビジョンを持っている。ビクトリア朝時代に生まれた古い政治哲学は「偉大なる人間」理論から脱却していない。リーダーは方向性やイメージを決定し、政党は一人の肩にかかっている。これは実に悪いことだ。誰もが間違いを犯し、人間であり、性格に欠点があり、ジャシンダ・アーダーンが最近勇気を出して認めたように、疲れてしまう。そしてそれは、意思決定の質にとって本当に悪いことだ。
この10年間、私が多くの人たちと共創してきたメッセージのひとつは、政治は自分がするものであるべきで、自分がされるものではないということだ。そして、誰もが政治を行うことができる。私が主に言っているのは、選挙に投票したり、選挙に立候補したり、選挙運動をしたりすることではない。ゴミ拾いをしたり、子供たちが安全に公園へ行けるように横断歩道の設置運動を始めたり、学校の同級生が集まって学校のカリキュラムを変えるよう要求したり。あるいは、TikTokビデオを作ったり、請願を始めたり。
「コントロールを取り戻そう」というのは、2016年のブレグジット国民投票で離脱派が勝利した感情だが、その背後には、自分たちは無力であり、誰か、ジェレミー・コービンであれナイジェル・ファラージであれ、有名人のリーダーが自分たちを救いに来てくれる必要がある、というメッセージがあった。グリーンのメッセージは違う。私たちは協力し、支援しするが、方向性を選ぶのも推進力を与えるのもあなた次第。
真に民主的な世界は、ローカルな意思決定が新しいグローバルなパターンにつながっていくものであり、私や緑の党が今日想像しているようなものにはならないだろう。それはそれで構わない。しかし、何十億もの人間のエネルギー、時間、才能の結晶が、この地球上のすべての生き物と、彼らや私たちが依存している非常に複雑な生態系を尊重し、協力して働くことで、真に思いやりのある、人道的で公正な世界を実現することができるのだ。
1930年代や1940年代を繰り返す必要はない。それを阻止するための民主的な権力を握り「人民」の敵だと判断した者に粗野な侮辱を叫ぶ極右指導者から目を背けることは、私たちの選択なのだ。私たちは共同で、人々と地球にとって前向きな方向を選択し、私たちの社会のあり方を見直し、擦り切れたものを修復し、持続可能で思いやりのある、喜びに満ちた生き方を新たに再構築することができるのだ。
本稿は、ナタリー・ベネットの新著『Change Everything: How We Can Rethink, Repair and Rebuild Society』(Unbound社のペーパーバック)からの抜粋。
ナタリー・ベネット(正式にはマナー・キャッスルのベネット男爵夫人)は、2012年から2016年までイングランドとウェールズの緑の党の党首を務め、2019年に貴族院に入った。この10年間は、全国各地を回り、学校、専門大学、大学で講演を行い、私たちの多発する危機に取り組むために行われている多くの素晴らしい草の根の取り組みについて話を聞いてきた。彼女は農業科学、人文科学、社会科学の学位を持っており、20世紀型の還元主義的アプローチではなく、統合されたシステム思考への情熱を反映している。ガーディアン・ウィークリー紙の編集者、バンコク・ポスト紙の副編集長、タイ国家女性委員会のボランティアなどを歴任。シドニー北部のワルメデガル族の土地で育つ。
イラスト:Rachel Victoria Hills www.rachelvictoriahillis.com
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