ただ結びつける

欲しい未来のために点と点をつなぐ

アンディ・アトキンスが論じる。ただ、環境、開発、人権の間の結びつきを自覚する事だけ。これが世界をより良くする。

 実のところ不要なのは、ポンポンと目まぐるしい、ニュース速報やツイッターのフィードで、これらにより念押しされるのが、世界中にたくさん問題がある事。衝突がここで、政治的制圧があちらで。今も続く貧困、貧しい国の経済的な困窮、そして貧富の差の拡大。世界中の環境災害。ええ、「異常」気象が気候変動時代の新基準になっています。自然災害。例えば、近年報道のあった、過去30年間にわたる4億の鳥の死滅などです。

 私たちは政府が国内外で行動するのを期待しています。たくさんの人が寄付をして、この問題やその他の問題に取り組もうとしています。しかし、寄付や奉仕に専念したとしても、問題が大きく重層的で圧倒される気がする事もあるでしょう。どこに目を向ければ良いのか分からず、希望を失いかねません。

 ただ、私たちに必要な物がひとつあるとすれば、それは人々です。希望を失うのではなく、いかに、より早く、向上できるかを考え、かつてないほど大人数の仲間に入るような人々です。本稿で探りたいのは、希望の理由: 物事の結びつきです。

 「人権」、「開発」、「環境」に関する社会運動をしてきた何年間かで、希望が持てました。それは、私たちの愚行から救われようと神へ盲目的な信仰をする(私は強く信じていますが)中で広がる物ではありません。また、人間の良い意図による究極の偉業にある物でもないのです。残念ですが、何の保証もないと思います。私が読んだジェアド・ダイアモンド (Jared Diamond) の著書「Collapse」は、環境が引き金となり壊滅した文明に関するものです。私の希望は、物事(健全な環境、安定した経済、公正な社会、そして人権の尊重)の結びつきの中にあります。 確実な結びつきや、どんな地域でも使える解決策に、ますます民衆が気付く事で、包括的な変革を加速化できそうです。

 富裕層の多くは、この結びつきが分かっていません。。。今のところはです。私たちは、人生の「分野」をとても厳密に区別してきました。私は今まで人権に熱心な人たちに会ってきましたが、その人たちは(私がバードウォッチングを楽しむ権利を尊重する間に)、このように考えているのでしょう。イギリスに残存する野鳥の生態系を守る事は、市民の権利を安全に守るという「本当の」問題に比べて些細な事だと。私の知る人たちで、自然を保護に熱心な人たちがいます。私が市民権や人権を守る事を、心地悪いほど「政治的」と考えていそうな人たちです。私には、海外の貧困の緩和に深く専念する同僚がいた事があり、彼らは、「社会環境」はぜいたくな西洋の妄想だと信じていました。この人たちはみんな良い人たちです。しかし、西洋世界の私たちのような人たちのほとんどが、文化的に条件付けられているのは区別する事で、権利、環境、経済発展を分けています。

 この区別の不自然さは、多数の海外出張で、私に舞い戻ってきました。1990年代に、私は、中米のホンジュラスにある現地人の組織と緊密に働いていました。彼らのコミュニティーは、森の植物や パトゥカ川 (Patuca River) の豊富な魚に頼っていました。彼らは、大農場経営や森林伐採をする企業の殺し屋に脅かされていました。その企業は、彼らに先祖代々の土地を手放すよう脅迫しようとしていたのです。

 コミュニティーは知っていました。森林伐採や大農場化は災害を招く事を。森林だけでなく川も駄目になると。生きるための食料庫と輸送ルートなのです。ホンジュラスのこのグループの暴力的な脅迫は、人権問題か、経済発展問題か、それとも環境問題か?

 これら全てでした。むしろ、それ以上でした。完全に生命に対する脅威でした。彼らは自分たちの生命を守りました。ただ殺害されない権利だけでなく、食事、小屋、精神的な滋養を与える物理的な環境もです。

 英国で長い歴史があるのが、民主主義、富裕層の地位、野生生物保護です。私たちは、あたかも、これら生活を特徴付けるものが互いに独立しているかのように、長らく振る舞ってきました。ところが今では、重要な環境と経済の動向により、再度結びつきが、次から次へと明るみになっています。結びつきは、まだ、多くの人のレーダーの下をかいくぐっていますが、ビーッという警告音は大きくなり、更に衆目に認められていく事でしょう。

 一例が洪水です。英国は、2013年と2014年に記録的に水の多い冬を経験し、容赦なき降水、頻繁な嵐、途方もない大波がありました。ニュースのヘッドラインの焦点は、海峡沿いの低地のサマセット州(洪水の跡地が何週間か内陸の海に)でしたが、国中の多数の地域で(西はウェールズの海岸から東はノーフォークまで)、家族が家を置き去りにして避難しなければなりませんでした。

 政府は当初、環境庁を洪水被害の回避に失敗したかどで咎めました(同庁は予算カット)。しかし、最終的に首相が認めたのは、もっと大局的な原因で、、、気候変動でした。気象庁が確認したのです。極端な気候(人命、作物、インフラを脅かし、英国の企業に何千億ポンドもの損害を与えた)が吹き荒れたのは、世界的な環境現象によるもので、 原因は特定の経済活動でした(基本的に、経済を動かしているのは化石燃料)。英国の5億世帯が既に洪水のリスクにあり、その内の37万世帯が「非常に高い」リスクにあります。政府によると、気候変動で、2020年までに、非常に高いリスクの世帯が1億に増える可能性もあるとの事です。

 その他の例としては、大気汚染があります。1950年代のロンドンの「pea-souper(えんどう豆のスープのように黄色がかった)」スモッグについて両親や祖父母が話したのを覚えている人や、中国の大気汚染のテレビ映像を見ている人にとっては、現代のイギリスの街の空気は綺麗に見えます。ですが、殺人的です。時々、大気汚染の微粒子(大半がディーゼル車両から)で、子供も大人も多くの人が、ただ危害から逃れる事を余儀なくされます。調査が示すところによれば、英国では汚染により毎年29,000人が早死にしています。環境を毒すれば、私たちを毒する事になります。

 今度は、授粉者(蜜蜂など)の減少という因果関係を例にとりましょう。トニー・ジュニパー (Tony Juniper) が今号でとても詳細に説明しています。 University of Reading の調査で分かったのは、授粉者とその無料の授粉サービスを失うとすると、年間18億ポンドが英国の食料費に上乗せされる事。主な理由は、果物や野菜への手による授粉でコストが上昇する事です。手授粉は技術的に可能で、中国の蜜蜂喪失地域で既に行われています。しかし、食料価格の上昇は、英国で極貧労働者に打撃を与え、彼らの満足の行く健康的な食事を打撃します。

 問題が結びついていれば、解決策もそうです。この事の明白な証拠が増えていて、目の付け所次第です。私たちを助ける健全な環境の歴史に目を付けるのです。

 健全な環境でお金を節約できます。健全な泥炭地は自然な浄水器の役割をし、人工的な濾過の必要性を減らし、健全な森林は自然な雨水貯蔵庫の役割をし、地表に流れ出る水を緩慢にして、峡谷の底の洪水リスク(人工的で高価な洪水防御の必要性も)を減らします。

 これは、どこかの企業の損失にはなりません。例えば、Yorkshire Water 社は、イングランド北部で集水域を再植林する主要プログラムを持ち、泥炭地を保持するために「鳥類保護王立協会 (RSPB)」と協働しています。未だに復元の初期段階にあり、このコミュニティーサイエンスプロジェクトは、気候変動と闘いつつ、同時に地域市民をサイエンスとコミュニティーに巻き込んでいます。

 自然に触れると体に良いです。ストレスの多い電話の後に菜園で数分歩く事や、ランチタイムに公園を歩く事で、落ち着く効果を経験した事の無い人がいるでしょうか? 2007年の RSPB のレポートが示すところでは、自然との結びつきには、肯定的な効果がありました。特に、不安やストレス、高齢者と痴呆のある人、子供や事務職の人に効果があり、犯罪と不当な攻撃を減らします。

 人々はよく、問題の間の結びつきを、進展を妨げる物と考えます。「手に負えない」というような言葉を使って。しかし、物事の相互の結びつきは、より早く進展する機会となり得ます。もし、私たち「環境活動家」が、機会がある毎に、肯定的な結びつきを明らかにして祝福したらどうでしょうか? 環境の影響による懸念を持つ他の「分野」へ組織的にアプローチしたら、どうなるでしょうか?鍵となる機会(生活を最大限まで高める事で、全ての「分野」を利するような)を見つけ出し、具体的な変化を共に推し進めるとしたら、どうでしょうか?そうする機会が十分たくさんあります。

 フラッキングを例にとりましょう。英国政府は、英国内でシェールガスを採掘しようと意気込んでいます。それには、水圧破砕法「フラッキング」が必要です。別の化石燃料源を開発するのに、既知の化石燃料「資産」の80% は使わずに、とめどない気候変動を避けるべきだとすると、気違い染みています。フラッキングとその危険性に対する民衆の意識は、ほんの数年で、取るに足らない事から注視すべき事になりました。Friends of the Earth とその他の団体は、3年間、英国でのシェールガスの商用開発を停止する事に成功しました。私たちは民衆意識を変え、商用開発を避けるよう、フラッキングがいかに日々の事柄に影響し、同時に気候変動に加担するかを示したのです。

 フラッキングは、地域環境に甚大な影響(どれほど制御可能か不明)を与えるでしょう。理にかなった懸念としてあるのは、水質の悪化、大気汚染、景観の破壊、交通量の増加、(フラッキングによる一時的に巡ってくる数少ない雇用よりも)長期的な地域の仕事の必要性です。

 ただ悪い事(一般にフラッキングや化石燃料など)を止めるべきであるように、良い事(再生可能エネルギーやエネルギー効率の対策など)を始めるべきです。ここでも、分野と懸念を結びつけるのに十分な機会があります。太陽光発電を例にとると、価格がここ5年間で 80% 急落。Friends of the Earth が、単純に、気候変動への利点を基本に、太陽光エネルギーを推進しているのはかなり妥当では無いでしょうか。しかしながら、同組織が考慮していないのは、個人や組織が何とかやっている活動の複雑さ、そして、太陽光発電の数々の利点です。

 この前の私たちのキャンペーン「Schools Run on Sun」は、コミュニティーレベルでの再生可能エネルギー適用を推進する目的で、変化を起こすのに必要十分な数の学校に対して太陽光パネルを設置するのを支援しています。学校は気候変動を危惧しているかもしれません。また、限りある予算で、急騰する電気料を心配しています。学校は独立した組織ですが、頻繁に地域コミュニティーの生活の中心にいます。彼らは、教育だけでなく、地域コミュニティーの質の向上にも貢献したいのです。それ故、私たちは学校に「Run on Sun」を勧めています。炭素削減のみならず、電気代を減らして生徒の教育に使い、地域コミュニティーのクリーンエネルギーの指標になるようにしているのです。

 もし、私たちが点と点を結ぶ事で、より早い進歩を達成できるとするならば、積極的にそうする機会を探すべきです。

 環境活動家と「グリーンな」組織は(毎度お決まりですが)、自然や環境に対して「正しい事」をする権利と経済的恩恵を探求し強く奨励すべきです。また、他の分野にも挑んで、各領域の進展における純粋な環境面での利益について特定し、公に知らしめるべきです。全ての分野(環境、人権、開発、健康など)で、あらゆる機会に事業に挑み、製品、製造手法、価格、そして、人権、正当な賃金、労働環境を尊重した供給システムを確実にすべきです。そして、更に緊密に協働すべきなのは、各々の変革の機会です。地域から世界レベルへの変革です。

 地域的に、英国では、人々による更に大胆なムーブメントが必要です。その人たちが戦うのは、自分たちの町や街の本当の発展、自然と健全な環境を保護し、不平等を減らして末永く安定する暮らしを生む発展のためです。英国での今後の選挙で、これら全ての問題の重要性を候補者へ話す各分野の支持者と活動家が必要です。読者のみなさんが、満足いく生活のために、みんなのために、投票したいと党利党略的になるべきではありません。

 進展のための重要な機会は、国際的な国連気候変動サミット(トップ会談)。パリで2015年末にあります。同サミットには、2030年までに温室効果ガスを激減するための世界的な条項を締結する役割があり、やり方は、貧困国に公平で、且つ、回避不能なレベルの気候変動に対処する最貧国への支援に同意できるほど公平で、人権、経済のレジリアンスにとって、記念碑的な影響を持っています。また、ところが、国連の気候変動交渉では、自然に対する言及がほぼ皆無です。ですが、今、気候変動に伴い、多くの海洋や陸生の生育環境や生物種(サンゴから北極熊まで)の存在に由々しき脅威を与えているのです。おそらく、起こりかけているこれ以上重要な「自然」サミット(トップ事項)は他にありません。

 点と点を結ぶと、単純に現実が反映されます。身体的、経済的な法則を認めて、それと共に事が進みます。人類、そして私たちの全ての行為(作り、行い、売り、買い、息をして、食べる)は、自然環境と自然資源の一機能なのです。経済、政治、社会、全てが環境の内部で起こりました。私たちが、中米の森林に住む民族の一員であろうと、ロンドン中心街の銀行家であろうと、全員が完全に環境とその供する「恩恵」に依存しているのです。ところが伝統的な経済は実際こうです。その貪欲なる子孫たち、近代の消費者社会は、環境が眼中にありません。

 多くの国で、真実を声高に指摘する人々が、ますます傾倒している課題は、暴力(人権侵害)です。挑んでいるのは、現状維持、つまり、完全に、どう見ても非持続可能な事です。脅威がとても広がったため、Friends of the Earth International には、世界中に環境を守る専任を置くプログラムがあります。

 環境の早急な向上に対する答え、世界的な貧困と人権の尊重は、結びつきの 機会 を認めるところにあります。答えは、この真実を否定するよりも認めるような解決策を促進するところにあります。この真実が分かる他の人たちと決然と提携するところにあります。人生を全うするためのムーブメント。この中に、私の望みがあります。


アンディー・アトキンス (Andy Atkins) は Friends of the Earth の常務取締役


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Joining the dots between environment, development and human rights

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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