鳥の目線

エドワード・メイヤーがバイオフィリック [人間は自然を好み、自然とつながりたい本能的欲求があるという考え方に基づいた] 都市に自然のスペースを作るという本を歓迎。

翻訳:舘林 愛

『鳥に優しい都市 :安全な都市の生息地を創造する』

ティモシー・ビートレイ 著

The Bird-friendly City: Creating Safe Urban Habitats

Timothy Beatley

Island Press, 2021

ISBN: 9781642830477

 イギリスの2019年の「State of Nature」レポートでは、もっとも重要とされる野生生物の数は50年間の間に60%減少していることがわかり、前例がなく劇的な変化です。イギリス中を具体的にみてみると、どの作物も数倍量の殺虫剤が散布され、その過程で私たちの野生生物は絶滅してきました。イギリスはヨーロッパの中で野生生物が一番消滅したと言われ、私たちの未来がどうなるのか立ち止まってよく考えてみませんか。人間、野生のハト、ネズミ、他にはほとんど何もいない場所になるのか。毎日その可能性が高くなっているようです。最近、ロンドンとその先を抜けるテムズ川沿いの船旅に出て、ガラスに覆われた石柱がひとつずつ現れ、より大きい石柱が現れ、最後には19万平米ほどの事務所ぐらいの大きくつやつやとした巨大なものが現れじっと見つめていました。ティモシー・ビートレイの素晴らしい著書である「鳥に優しい都市」の中では、北アメリカにガラス窓のある建物が建てられ始めた頃、その窓が見えずに野生の鳥が飛び込んで首を折り、殺されたそうです。

 アメリカとカナダでは毎年このように10億羽の野生の鳥が死んでいると推定され、様々なガラスフリットを使ったり、デザインを変えたり、電気の明かりを調整したりするなど何かできる努力がある、とビートレイはその著書に書いています。いくつかの主要都市、特にトロントでは地元の活動家によって活気づいています。カナダには Fatal Light Awareness Program(滅亡的な光への意識プログラム)、通称FLAPという組織があり、市民の抗議によって、ガラス窓との衝突を避けるために、建築基準法を変えようとしています。しかし、ここイギリスでは、ロンドンではどうでしょう。20年間ここで保護活動をしていますが、私の知る限りありません。

 ですので『鳥に優しい都市』はちょうど良いタイミングでした。この本は、1つの大陸から旅が始まり、カナダ、アメリカ、イギリス、シンガポール、オーストラリアを1つの国から他の国への出会いを描き、都会を通り過ぎて渡っていく鳥の暮らしを保護するため、活動家たちが何をやっているのかを知るために彼らと話をしています。そのことが、私たちの都市を自然界をにとって豊かな資源に作り代えるためのアイディアや情報、技術を与えてくれます。なぜこれがとても重要なのでしょうか?イギリス政府の政策文書『A Green Future: Our 25 Year Plan to Improve the Environment(緑の未来 - 環境をよくする25ケ年計画』(2018) にはこういう記載があります。

 「自然の中で過ごしましょう。定住者として、もしくは訪問者として。メンタルヘルスや幸福感を向上させましょう。ストレス、疲労、怒り、落ち込んだ気持ちを軽減させることができます。免疫システムを向上させ、身体活動を促進させ、喘息などの慢性病のリスクを減らせるかもしれません。そのおかげで寂しさに立ち向かいコミュニティをつなぎとめることができます。

このようなことはよく知られていることです。ビクトリア時代のすばらしいパブリック・パーク [中世に市民の要求によって開放された王侯貴族私有の大庭園で今日の公園の原型] や創作に刺激と影響を与え、その後も園都市運動は、今でもバイオフィリック都市のコンセプトを推し進めていて、シンガポールに変化をもたらしています。そして、コンピュータ画面を見つめるよりも、通りの反対側の高い壁を窓から見るよりも、座ったり植物の世話ができる庭があることの方がよいことをロックダウン中に多くの人が気付きました。人間や他の動物はかごの中では満足できません。

 しかし私たちは心と体の刑務所を発明し、その中に入れ、外に広がる本物の世界を見失っています。この本は、野生ではなくなった都市において、私たちにどうやってそれを取り戻し、美しい野生の生き物で溢れる世界にもう一度できるかを教えてくれます。

エドワード・メイヤー(Edward Mayer)は「Swift Conservation(アマツバメ保護)」の創設者であり、アマツバメを祝福し保護するために何ができるのかをウェブ上で伝えています。www.swift-conservation.org

Bird's-Eye View • Edward Mayer

Review of The Bird-friendly City: Creating Safe Urban Habitats

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リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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