対立とつながり

世界のリーダーたちの無為無策と強欲を前にして、未来の世界が温暖化1.5℃以内に収まることに、私たちはどんな希望を持っているのでしょうか。最近、ゴヴァン・グレイヴィング・ドック(Govan Graving Dock)の端に立ち、クライド川に映るグラスゴーの暗い街並みを眺めていると、その答えのひとつがはっきりと見えてきました。そのすぐ向こうのブルーゾーンでは、第26回締約国会議が開催され、世界の指導者たちが自分のこめかみを揉んで頭を悩ませていました。木曜日の午後、閉会前日であるものの、地球温暖化抑制の合意への希望は、かなり遠くに感じられました。

 私の背後には、グラスゴーの巨大な造船業の面影を残す古いポンプ場の廃墟がありました。19世紀半ばに船の修理のために建てられた乾ドックは、30年以上前に閉鎖されて以来、廃墟と化したままです。現在のゴヴァンは、高い失業率と深刻な貧困を抱え、かつての工業地帯とはかけ離れた姿になっています。現在は、低木が生い茂り、ラガー缶がくしゃくしゃになっているこの場所は、高級アパートとして開発される予定でしたが、炭素貯蔵と土壌回復のための湿地生態系に徐々に変化しています。この生態系への転換は、復元作業とカーボンオフセットを組み合わせた Blue Green Carbon プログラムに加盟するコミュニティ利益会社(Community Interest Company)である Blue Green Glasgow 社のプロジェクトです。

 少し上流には、空との境界線一面に広がる光のショー、全長70メートルのLEDインスタレーションの「No New Worlds」というメッセージが水面越しに光っていました。近くに停泊していた(大方計画的ではないかと思われていますが)蒸気船TSクイーンメリー(TS Queen Mary)が、そのメッセージを(COPのスポンサー企業が製品のパレードを行うグリーンゾーンにいる)来場者の視界から遮っていました。

 空が暗くなるにつれ、ドックは、階級問題、帝国時代の遺産、平等と企業の利益との戦い、そして自然との戦いなど、さまざまな対立の導火線のように感じられました。そのとき、都市の低い騒音が突然途切れ、近くのフジウツギからミソサザイが飛び出し、歌いはじめたのです。この小さな鳥は、イギリスではありふれた鳥ですが、その小ささと地上付近を好む習性から、目にすることが多くありません。その声は、暗闇で力強く、生命への渇望に満ちていました。

 幅の広い流れる川の向こう側では、各国首脳が世界的な排出量の増加に挑戦できないような合意を結んでいました。さて、次はどうするのか?ミソサザイのように、私たちは声を上げ、生きたいと願っています。北半球にいる私たちは、自分たちが立つプラットフォームを構築するためのつながりと対立を認め、南半球にいる他の人々が自分たちの物語を語るための場所を提供することができます。ウガンダの気候変動活動家ヴァネッサ・ナカテは、グラスゴーで行われたCOPに向けた推定10万人の観衆を前にしたスピーチで、次のように述べました。「私たちは希望を持ち続けています。なぜなら、もう一つの世界は可能だからです。私たちは力を合わせて、これを実現することができます。強さと希望が私たちの進むべき道です」

 今号のリサージェンス&エコロジストでは、ジョナサン・ニール(Jonathan Neale)が「COP26の次は?」と問いかけ、世界の気温上昇を1.5℃以下に抑えるための大衆運動を構築する必要性を訴えています。フォトジャーナリストのクリス・トリン(Chris Trinh)は、先住民族活動家がライン3石油パイプラインに抗議しているミネソタ州を取材しました。英国では、ローリー・キング(Laurie King)とケイティ・ホジェッツ(Katie Hodgetts)が、若者たちが環境不安に対処する方法を探っています。テーマ別のコーナーでは、再自然化について、そしてそれが農業、文化、生態系にとって何を意味するのかについて議論しています。

 このたび、本誌の内容を一部変更することになりました。「現代の都市」号の成功を受けて「生物のつながり」のコーナーを継続します。また、エコロジストのコーナーでは、本誌と theecologist.org の仲間の仕事をより身近なものにしました。

 いつものように、この号があなたに力と希望をもたらすことを願っています。

マリアン・ブラウン は、リサージェンス&エコロジスト誌の編集者です。(翻訳:沓名 輝政)

Conflict and Connection • Marianne Brown

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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