地球の声

サティシュ・クマールの問いかけ:コロナウイルスが地球の声だとすると、私たちはどう応えるのか。

翻訳:斉藤 孝子

世界が前例のない危機に巻き込まれています。私は 83 歳ですが、いまだかつてこんな状況は初めてです。戦争は、人によって始まり、人によって制御したり終わらせたりできますが、コロナウイルスは自然の力の現れで、人による制御は不能です。現代の人々は、科学と技術を通じて自然を征服できると信じていました。しかし自然は、コロナウイルスを通して、自然を征服するなど人間の傲慢にすぎないと、声高にはっきりと示しています。

 自然を征服したいという人間の欲求は、人間と自然は別物であるという考えからです。この二元論的思考が私たちの問題の根底にあります。人間は他の生命体同様、自然の一部です。したがって、地球との調和のとれた対話の中で生活することが、この時代、喫緊にやらねばならないことであり、このコロナウイルス危機で人々が学ぶべきまず最初の教訓です。

 2 つ目の教訓は、全ての人々の行動が結果をもたらすということです。過去 100 年間の人々の活動が、生物多様性の減少、二酸化炭素排出量の増加、気候破壊をもたらしている温室効果ガス発生の原因です。海はプラスチックで、土壌は人工化学物質で汚染され、熱帯雨林は前例のない速さで消滅しています。これでは地球と対話しているとは言えません。それは人間側からだけの抑圧的な独白です。これら人間の有害な活動はすべて悲惨な結果に行き着きます。コロナウイルスはその一つなのでしょう。

 短期的には、自然がこの危機を通じて強いメッセージを送ろうとしていることを受け入れなければなりません。これが自然の独白なのです! しかし危機はまたチャンスでもあります。コロナウイルスの危機は目覚めよ!との呼びかけでしょう。私たちはペースダウンし、謙虚に地球の声に耳を傾けることです。私たちは、回復力、忍耐力、連帯感、そして冷静さをもって、この危機に立ち向かわねばなりません。

 自然は、親切で寛大で情け深く思いやりがあります。自然においてはすべてのものが過ぎていきます。この危機もやがて過ぎ去るでしょう。ですから長期的には、人類全体がこの危機に前向きな対話で対応し、地球との崇高な対話の中で経済、政治システム、生活様式を再設計するチャンスにしなければなりません。自然のままの場所を尊重することを学ぶのです。豊かな美しさや命の多様性を喜ぶのです。人間は自然の不可欠な一部だと認めることです。自然に対して行っていることは、すなわち私たち自身に対して行っていることです。私たちは皆互いに、つながり合い関係し合っています。だから私たちは地球と常に創造的友好的対話をするべきです。

 自然の進化の過程には多くの危機がありました。生命は地質時代の長期にわたる闘争を通して進化してきました。事によると — コロナウイルスは、新しい意識、つまり多様性の中で繁栄する生命総体の意識、相互性、互恵性の気づきを生み出すためにここに出現したのかもしれません。そしてそうです、人間と地球との対話こそが、その関係性の基盤なのです。

サティシュ・クマールはリサージェンス&エコノミスト誌の名誉編集長。最新著書 「エレガント・シンプリシティー (Elegant Simplicity)」は、www.resurgence.org/shop/books にて入手可。

Article - Voice of The Earth • Satish Kumar

Coronavirus maybe the voice of the Earth. What is our response to her? 

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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