戦争の灰の中で自然とつながり直す

キャサリン・アーリーはアンゴラの受賞歴のある環境学者と話します。

翻訳:馬場 汐梨

「もし地域の人々が生活を改善しないと、環境への影響を止めることはできません。なぜなら彼らは環境に依存しているからです。環境は贅沢するものではありません。」これが 29 歳のアンゴラ人で野生生物民族保護活動家のアジャニー・コスタ (Adjany Costa) の仕事にある哲学です。彼女は、地域の貧困と戦いながら、野生生物の保護を促進するモデルを発展させるという仕事で国際的に高い評価を得ています。

 2002 年に終了したアンゴラの 30 年間に及ぶ内戦の後、多くの人々は大自然とのつながりを失いました。コスタは自分の子供時代に経験した唯一の自然は、父親が週末によく連れて行ってくれたビーチだったと言います。

 しかし 2015 年のナショナル・ジオグラフィックの遠征の間、コスタはアフリカの最も大きな河系の一つであるオカヴァンゴを発見しました。その川の流域は、アンゴラとナミビア、ボツワナによって共有されており、伝統的な野生生物が存在する場所であるだけでなく、無数の人々にとっての食べ物や水、そして生活の源でもあります。

 辺境のルチャゼ (Luchaze) 地域の住民はこの流域の上流、3 つの国にまたがるオカヴァンゴの水位を保つのに重要なクイト川の河畔で暮らしています。しかし、持続不可能な生活が行われたことによって、川と水を保持するのに極めて重要なミオンボ林地を脅かしているとコスタは説明します。

 人々は農業やハチミツ生産といった活動のため、あるいは子どもたちを蛇から守るために草地をきれいにしようと火を点けます。その地域の種が生き延びるためにいくらかの火は必要ですが、自然なものと自然でないものの間には極めてわずかな差異しかありません。「火の使用頻度や範囲が持続不可能で、景観に影響を与えているのです」とコスタは言います。

 その地域は観光の発展によっても脅かされており、3、4 人の国際的な事業者が活発にその地域を調査しているとコスタは報告しています。彼女は、時が来れば自分たちの権利を擁護できるように地域の人々に発言権を与えたいと考えています。

 しかし最初のステップは、人々が環境とのつながりを再構築することです。そのコミュニティの子どもたちは、地域で知られている動物の多くを見たことがなく、動物が鳴らす音に気づいているだけです。さらに、伝統的な知識を子どもたちに引き継ぐことが戦争によって中断されたため、子どもたちは自分の親や祖父母が過去に守ってきた特定の地域について気づくことはありませんでした。

 このギャップを埋めるため、コスタは森を守る人々と川を守る人々の伝統的な話を説明する本を地域の人々と作りました。「子どもたちは今、自分たちの祖父母が、今はなき野生生物との親密な関係を築いていたということを知ることができます」と彼女は言います。「私たちは子どもたちに、新しい価値観を押し付けようとしているのではないと知ってほしいです。実際には私たちは、彼ら自身の文化を環境保護のために活かしているということです」

 コスタはコミュニティで仕事をすることで見出したのは、彼らがオカヴァンゴ・デルタについて、数多くの人々がそれに依存しているということについて、そしてその保護における彼らの役割について、何も知らないということでした。「彼らが認識していなかった重要性を気付かせると、彼らは一緒に働くというアイデアにとても関心を示してくれました」と彼女は言います。

キャサリン・アーリー (Catherine Early) はエコロジスト誌 (www.theecologist.org) のチーフリポーターです。アジャニー・コスタ (Adjany Costa) は国連環境計画が企画する賞「Young Champions of the Earth 2019」の 7 人の受賞者のうちの 1 人。同賞は、環境保護の傑出したアイデアを持つ若者向けのもので、彼女はアフリカ地域として受賞しました。tinyurl.com/unep-prize-adjany-costa


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318: Jan/Feb 2020

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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