生命のサイクル...そしてリサイクル

今年、私は生命からの重要なメッセージを受け取った。それは、私が深く耳を傾けていなければ見逃していたであろうもので、この美しい号のテーマでもある。私が自然界から聞いたのは、私たち自身の人生と、私たちが大切に思っている人たちの人生のもつれた物語を、私たちが受け止め、分かち合う場が常に、そしてこれからも存在するということだった。

 ドアの外の世界とともに休もうという誘いは、大きな死別と40年以上にわたって私にとって大切だった人の死に続いて起こった。そして、私は正式に悲嘆する葬式などからは離されたものの、その喪失と深い悲しみの物語を、毎朝耳にするカラスの家族、質素な庭の雄大なシダ、本にしようと書き留めているミツバチ*、さらには(おそらく特に)自宅周辺の広い風景など、私の身の回りのものすべてに伝えるたようにと、自然界から歓迎された。

 そして、そうした。

 話す必要はなかった。それは救いだった。ただ耳を傾けた。耳を傾ければ傾けるほど、目に見えないものから語り返される物語は、私の心を高揚させてくれた。自然の傷と癒し、そしてそれにもかかわらず回復する力についての話、より広い枠組みにおける私たちの位置についての話、そして私たちすべてが今育むべき生物多様性の喪失の悲しみについての話。しばらくして、私は希望の物語や、そこから深い安らぎと平安を得ることができる生命のパターンとサイクルの物語も聞いているのだと理解した。

 生命。死。再生。

 玄関先の植木鉢に不謹慎にも種を落としてしまった高さ1.2メートルの野生のジギタリス属が、成長し、繁茂し、通り過ぎる人すべてにその存在と本質を誇らしげに告げるのを、私は深い悲しみの夏の数ヶ月間見ていた。背の高い花穂を楽しげに風になびかせながら、しかしやがて、あらゆるものがそうであるように、花は一輪、また一輪と、日に日に色あせていった。またひとつ夏が過ぎ、またひとつ隣の植物が姿を消した。

 アメリカの作曲家、ポーリン・オリヴェロスが1970年代に洞窟に潜り込み、周囲の環境音を録音し、「ディープ・リスニング(傾聴)」という言葉を生み出したとき、彼女はどんな話を聞いたのだろう、と私は不思議に思った。私が彼女のことを初めて知ったのは、ヴィオラ奏者で作曲家・指揮者のロバート・エイムズが、彼女の不朽の影響力について語ったインタビューだった。私たちは『不朽の』という言葉を受け入れるべきだ。彼女の作品を知らない人は、『Recipes for Listening』でポーリーンのことをもう少し知ることができる。

 以上、2024年最終号のテーマとアイデアを紹介した。エドワード・デイヴィーは、「困難な時代に希望を見出す」と題したスローな読み物のコーナーで、このような世界的に困難な年であったにもかかわらず、積極的に希望を持ち続け、私たちの悲しみの中で成長するための3つの力強い理由を示している、 NHSの心理学者とリレーショナル・コーチは、新型コロナの大流行時に立ち上げた「Spaces for Listening(聴くための空間)」と呼ばれる取り組みが、どのように今も続いているのか(しかも無料で参加できる)、そしてアーティストのレイチェル・メラーズは、地球のサイクルとリサイクルにしっかりと根ざしたアートを創作するために、どのように体現された地球と彼女の魂の祖先の両方に耳を傾けているのかを語っている。

 本号に掲載された記事も、同じようにあなたを誘うものだ。貴重なライターたちが、希望と安らぎをもたらすアイデアや発見を分かち合っている。「ディープ・リスニング」の実践の掘り起こしを通じて分かち合う人もいれば、自然界の中でアイデアや発見に注意を払うことを通じて分かち合う人もいる。さもなければ、そのようなアイデアや発見は、話すのに忙し過ぎて、私たちからや彼らから求める時に語りかけ呼びかけるのを聞けない。

スーザン・クラーク

リサージェンス&エコロジスト誌の編集者

(翻訳校正:沓名 輝政)

347: Nov/Dec24

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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