海辺の詩人
ベン・オクリ著
翻訳:斉藤 孝子
彼は象形文字を解き明かして朝を過ごし、昼過ぎに海から現れた。海沿いに続く足跡の意味
に思いを巡らし、世界の反対側から巡り回る叫びを解釈していた。
海は、得体の知れない怒りで、古代の寺院や繁栄する町々を破壊した。地震は山々や人々の
運命に裂け目を打ち込んだ。魚たちの噂話は、三日月の土地で起こった不完全な革命の報を
もたらした。
錬金術の記号と格闘しながら、彼は歴史のざわめきに気づいていた。昼近く、イソギンチャクと海底に咲くアカシアの中を散歩した。暖かい海域へ回遊するマグロに魅せられた。
長い朝だった。人間の歴史の長い朝だった。あいまいな衝動に促され、人が2本足で立ち上 がった瞬間から、100万年後、自身の意識に立ち上がった瞬間まで。長い朝だった。ピラ
ミッドの発達や核の現実への悔いをかろうじて目にできた時間だった。とは言え、夢に出入
りする魚らと語らうには十分な時間だった。。。(全文は購読登録にてどうぞ)
「魔法のランプ」から:ベン・オクリ著・ローズマリー・クルーニー絵「我らの時代の夢」 アポロ社Head of Zeus出版
べン・オクリ (Ben Okri): 詩人、小説家
Poet by the Sea • Ben Okri
A short story, illustrated by Rosemary Clunie
309: Jul/Aug 2018

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