陸と海での保護活動

草原の減少ストップに、牛の野草飼育が貢献か

新たな研究が、伝統的農業へ転換するメリットを明らかに。マリアンヌ・ブラウンからのレポートです。

翻訳:浅野 綾子 

牛の飼育では、栽培用に改良された牧草を餌にするのが慣行的です。農家に種の多様性に富む草原での放牧を奨励すれば、イギリスの草原保護に一役買うかもしれません。

 セーブ・アワ・マグニフィセント・メドウズ (Save Our Magnificent Meadows:私たちの素晴らしき草原を守ろう) の運動に向けた新たな研究によれば、野生の草原で飼育した牛の栄養価は、慣行栽培の牧草で飼育された牛と比べてはるかに高くなり得るとのこと。この運動にかかわる団体の1つプラントライフ (Plantlife) のトレボー・ダインズ (Trevor Dines) が当誌に伝えた話です。野生の草原で飼育された牛に対する消費者の需要を創出できれば、その草原管理について農家の経済的な実行可能性を高め、草原保護の経済的な実行可能性も高めることになるとダインズは言います。

 英国で1930年代から、野生の草原の97%超が消失し、結果として貴重な昆虫の個体群が減少しています。

 周囲に残っている野生の草原はほとんどなく、人々はどうやって草原を楽しめばいいのかわからなくなってしまっているとダインズは言います。「草原に腰を下ろして、キンポウゲをつむ。こんな姿は暮らしの風景から消えてしまいました」とダインズ。「野生の草原ほど胸がわくわくする場所はないんですよ」

 野生の草原を保護することに関心をもってもらうために、プラントライフでは、ナショナル・メドウズ・デイ (National Meadows Day) を開催。今年は7月7日に行われます。このイベントでは、虫取りや、チョウの見分け、ダインズが「五感全部が奮い立つ」と言う草原を走り抜ける機会ももうけています。

 以前、昔ながらの草原では、1から8月のはじめまでは草が伸びるにまかせ、その後は干草用に草を刈り取りました。さらに、9月と10月には、草のない状態での家畜放牧が続いて行われました。今日では高度に管理された農業技術(1年に2回か3回、貯蔵牧草の刈り取りがあります)が採用され、野草が育つ十分な時間がないのです。

 「草原は、再野生化の議論で見落とされています」とダインズは言います。「私たちは森林にこだわり過ぎてきました。でも、バランスが必要なんです。草原を必要とする種があります。草原には、森林とは異なる役割があるのです」

www.plantlife.org.uk

tinyurl.com/cattle-meadows

農家は、どのようにして野生の草原を保護できるのか。当誌の新しいポッドキャスト「Resurgence Voices」に向けて、マリアンヌ・ブラウンが、2015年ナショナルメドウズ賞 (National Meadows Award) の受賞者オードリー・コンプトン (Audrey Compton) と語ります。


マダガスカルでジンベエザメの新たなホットスポットを発見

専門家は、ジンベエザメを保護するため、観光の制限が必要だと言います。メリッサ・ホブソンのレポートです。

翻訳:浅野 綾子

マダガスカルは、若いジンベエザメが捕食活動をするホットスポット。「Endangered Species Research」ジャーナルに掲載されたマダガスカル・ジンベエザメ・プロジェクト (MWSP) の新たな研究が伝えています。

 この研究では、2016年の9月から12月のシーズン中、ノシ・ベ (Nosy Be) 地域で、85のジンベエザメの個体が識別されました。比較されるのは、同年、70の個体が識別されたタンザニア、33の個体が識別されたモザンビークです(両方とも、ジンベエザメの目撃地として世界的に有名です)。この新たな発見で、ジンベエザメツアーマップにマダガスカルも仲間入りできそうです。

 MWSPは、海洋大型動物保護財団 (Marine Megafauna Foundation) 、フロリダ国際大学 (Florida International University) 、マダ・メガファウナ (Mada Megafauna:ノシ・ベ地域の海洋大型動物を保護する団体) が協働するプロジェクト。2016年に、生物学者であり、この研究の主執筆者でもあるステラ・ディアマン (Stella Diamant) によって創設されました。 当時、ほとんどの科学者はマダガスカルにジンベエザメの個体群がいることに気づいておらず、地元住民もおそらく30頭程度にすぎないと見込んでいました。それ以来、MWSPが写真識別によって確認したジンベエザメの個体は250頭近くに上り、通信衛星のタグを利用して個体の動きを追跡しつづけています。

 「今ならここにジンベエザメがいると世界に発信できます」とディアマン。「マダガスカルは、若いジンベエザメにとって重要な季節的生息地なのです。ですから、ジンベエザメの効果的な保護を確実にしなければなりません」

 ジンベエザメに悪影響がないよう確実にするため、観光客が殺到した場合は適切な対処が必要との配慮はもっともなことです。ディアマンは、ジンベエザメの周囲での行動の要点をまとめた行動規範をつくりました。この規範を守れるように、地元の観光業者一人一人をディアマンがサポートしています。

 「観光業者がこの行動規範の重要性を理解し、行動を変えはじめた時のことと言ったら、それはもう特別なできごとでした」とディアマンは言います。「海中で、ボート一艘がすでにサメと遭遇していたとしたら、他のボートは皆、すぐに近くに行こうとしないで待ったのです。見つけた1頭に皆がこぞって集まらないことで、ツーリストはサメと良好な交流ができ、いい写真もとれた。サメも邪魔されずに辺りを長く泳ぎ回ることができたのです。素晴らしいことでした」www.madagascarwhalesharks.org

メリッサ・ドブソンはフリーランスの旅行記者、広報コンサルタント。


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309: Jul/Aug 2018

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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