ストーンクラブ（STONE CLUB）

アーティストのマシュー・ショーが、活気ある多彩なコミュニティだけでなく、古い石への畏敬と愛に基づく古くて新しい包括的な空間を創造する方法に出逢ったことを紹介。

翻訳校正：沓名 輝政

2022年11月、コーンウォールのウェスト・ペンウィズで散歩していたとき、あるアイデアが浮かびました。私はアーティストのラリー・マクベス（Lally MacBeth）、映画プロデューサーのデンジル・モンク（Denzil Monk）と共にいました。デンジルは最近、今日私たちが知っている「Enys Men」という映画の撮影を終えたところでした。この映画は、気候変動を記録するボランティアを描いたもので、コーンウォール語の「Kernewek」から訳すと「石の島」という名の架空の島を舞台にしたものでした。

　映画の中で、ボランティアが読んでいるのは『A Blueprint for Survival』です。この文章は、1972年1月に雑誌『エコロジスト』の特別版として出版されたものです。この事実は、発芽しつつあったアイデアと同じく、ストーンクラブ結成に至る一連のセレンディピティな体験や出来事の一つでした。

　当初、私たちには2つのアイディアが浮かびました。まず、2020年と2021年のロックダウン期間中の強制的な移動制限が解除されたことで、再び私たちは外に飛び出し、散歩で友人や見知らぬ人と出会い、慎重に社会生活を取り戻し始めることができるようになりました。古代遺跡で何度も出くわし、会話を交わしてから先に進む人もいました。もし、古代遺跡や立石、ストーンサークルが好きな人たちのためのクラブがあったらどうだろう、と考えたのです。他の会員と気軽に会えるクラブがあったら？子供の頃「デニス・ザ・メナス」のファンクラブに入るのが楽しみだったのを覚えています。お金を送ると、ファンクラブのバッジと、軽薄な感じの大きな目のナッシャーのバッジが送られてきました。それを友達に見せると、友達も会員になりました。無邪気で楽しいクラブでした。

　2つ目は、もう少し深く掘り下げたものです。それは、二元的で分断されつつあるように感じられる世界に対応するため。積極的にそうするというものでした。離脱派か残留派か、ワクチン接種賛成派か反対派か、気候変動活動家か否定派か、その上、私が生きてきて初めてヨーロッパで戦争が起こったのです。なぜ、これほどまでに意見が分かれ、それぞれの立場で強い思いがあったのでしょうか。

　もちろん、その理由はさまざまで、複雑です。しかし、もし私たち全員が1つのことに同意できるとしたらどうでしょう。ストーンサークルが素晴らしいものであることに同意できるとしたら、どうでしょう。学術的なものから精神的なもの、そして単にささやかな興味まで、石をめぐる絆を深める理由はたくさんあるはずです。考古学者、地質学者、詩人、音楽家、作家、ダウジングをする人、信仰を持つ人、散歩をする人、徘徊権［他者の所有地でも不法侵入とならずに歩ける権利］のある人、犬の散歩をする人、自然の一部であることをただ身近に感じるために散歩するどんな人であれ、みんな平等に歓迎されることでしょう。もし、私たちが一つのものを好きであること、愛すること、少なくとも関心を持つことに同意できれば、きっと、受容と尊重のある会話の機会が生まれ、私たち全員のための古くて新しい包括的な空間が始まることでしょう。

　次のステップは、散歩を始め、これをテストすることでした。その結果、イギリスの各地にある古代遺跡や、あるグループはニューヨークのセントラルパークでのピクニックを手配することになりました。これは、メンバーが友人や見知らぬ人と出会い、食事やアイデア、伝承や物語を共有する場となることを意図したものです。

　そして、ラリーと私は、ストーンクラブの最初のイベントを開催することにしました。ロンドン中心部のリトル・ポートランド・ストリートにある The Social で、トークや映画、音楽を楽しむ一夜を開催したのです。著名なアーティストのジェレミー・デラー（Jeremy Deller）やブライアン・キャットリング（Brian Catling）が参加し、ラリーと私がこのイベントのために特別に制作した作品も展示されました。また、友人たちが古代にまつわる話をし、はるか昔を振り返ることが、これから向かう方向を探る上でいかに有用であるかを探求しました。

　この最初のイベント以来、私たちはロンドンの大英博物館、Institute of Contemporary Arts（現代芸術複合センター）、テート・ブリテンをはじめ、コーンウォール州ペンリンのビール工場のタップルーム［クラフトビール醸造所が自社製のビールを客に提供する場所］、バッキンガムシャー州ウェンドーバーの書店、グロスターシャー州ストラウドのアートセンター、数多くのフェスティバルなどで、あまり知られていない非常に親密な会場から大きな施設までのトークや映画上映を企画しました。

　最近では、ブライトン大学の視覚・物質文化教授であるアンネベラ・ポーレン（Annebella Pollen）を迎え、キボ・キフト［Kindred of the Kibbo Kift：英国のキャンプ・ハイキング組織］とWoodcraft Folk［英国を拠点とする子供や若者向けの教育運動］への進化（その他、あまり好ましくない方向への進化）について話を聞きました。ベン・ピッチャー（Ben Pitcher）からは、反ファシズムの空間としてのストーンサークルについて聞き、伝統的なフォークソングを美しく包括的に表現する若いフォークソング集団ブロードサイド・ハックス（Broadside Hacks）の音楽を聴きました。

　この原稿を書いている今、会員数が2,000人に達しようとしています。このような方々の存在が、ストーンクラブの脈打つ心臓部であると思います。会員の皆様には、遺跡を訪れた際の記録や写真をホームページで公開していただいています。その中には、その日一日を過ごした日記や、その場所や地域に関する専門的な知識もあります。中には、もっと個人的で感動的なものもあります。また、亡くなった家族の思い出の場所を訪れ、追悼の意を表したという話もあります。プロポーズ、婚約、結婚、そして友人との再会や幼少期の楽しい思い出など、さまざまなエピソードがあります。私たちは、ソーシャルメディア上で多くの人々（アクティブなメンバーよりも多くの人々）が集まり、好きなやり方でご参加いただけるよう促しています。

　私たちの古い過去、民俗文化、民謡への関心が高まっているのは確かです。自然とのつながりを取り戻すために。これは、私と同年代（40代）以上の人たちの多くが、自然のサイクルそのものが行ったり来たりするように、周期的に起こっていることだと認識していることでしょう。しかし、これを機に、私は、このような関心が、より深く、より長く続いてほしいと願っています。新しい世代が、自然から離れるのではなく、自然の一部であることを認識するように。ストーンクラブでは、ロングハイキングに慣れている人向けのコースや、何らかの理由でそうでない人向けのコースなど、訪れるべき場所を提案し、この考えを積極的にサポートします。

　今後も、古代遺跡につながるさまざまな景色を提供するイベントを企画していきます。また、第二のルールにあるように、ストーンクラブは「みんなのもの」ですから、ご都合のつくときに、直接、あるいはオンラインで、ご参加くださいますようお願いいたします。

マシュー・ショウ（Matthew Shaw）はミュージシャン、アーティスト。www.matthewshaw.org

ストーンクラブへようこそ

2021年から先史時代を再現する

ストーンクラブは、アーティストのラリー・マクベスとマシュー・ショーによって設立され、石の愛好家が集い、考え、そして最も重要なことは石を踏みしめるための場所として設立されました。ストーンクラブは、旅は目的地と同じくらい重要であると考え、人々が立ち止まり、新しい方法で場所について考えることを奨励します。ストーンクラブは、コミュニティと会話を通じて古代遺跡を結びつけ、協力的で包括的な方法で先史時代に新しい視点をもたらすことを目的としています。

もちろん、ストーンクラブのルールもお忘れなく。

ストーンクラブのはじめのルールは

ストーンクラブのことをみんなに伝える

ストーン・クラブの2つ目ののルールは

ストーンクラブはみんなのためにある

ストーンクラブの3つ目のルールは

雨ガッパとスナックを用意する

ストーンクラブの4つ目のルールは

ルールは破るためにある！

stoneclub.rocks