ブリストル 2023:変化のための国際的な運動が成熟する

地球に根ざした知恵と明確な政治戦略、草の根の事例と新しい世界観の種を結びつけるプラネット・ローカル・サミットは、現実のシステム変化の可能性を今でも信じている人々にとって極めて重要な瞬間になるでしょう、とヘレナ・ノーバーグ=ホッジは書いている。

翻訳・校正:馬場 汐梨・沓名 輝政

過去 50 年間、私は根本的な経済変化のための運動の構築を支援してきました。私は今でも、人類はハイテク消費文化から自然へとUターンし、強力な地域経済に基づくコミュニティを構築できると信じています。

何年にもわたって、私は環境運動の盛衰を見てきました。活動家であることは大変な仕事であり、友人や同僚の多くは落ち込んで疲れ果てています。 しかし、私は違います。私はまだ未来への本当の希望を持っています。

 確かに、グローバル企業の手に権力が容赦なく体系的に移譲されていることには、控えめに言ってもがっかりしています。 IMF が課した改革「自由貿易」協定の批准、大手銀行の救済、世界の億万長者の利益の急上昇など、すべてが非常に厳しい状況を残しています。

しかし、グローバルシステムの亀裂の中で、私は静かな革命が起きているのを見てきました。4つの大陸で仕事をしてきた私は、主流のメディアでは目に見えないものの、コミュニティや経済をゼロから積極的に変革しているたくさんのコミュニティグループと知り合うという、かなりユニークな特権に恵まれました。どこへ行っても、支配的なシステムに代わる、小規模でローカルで、インスピレーションを与えるほど美しい代替案が急増しているのを見てきました。

 これらのプロジェクトは、食品、ビジネス、医療、文化の再生など、場所によって根本的に異なるように見えます。しかし、共通の目的は、コミュニティや地球との具体的で真っ当な相互依存関係を再構築することです。 サンフランシスコからソウルまで、インドの田舎から英国まで、分散型のほぼ直感的な方法で人々が同じ曲を歌っています。彼らは、新しい世界がボトムアップで成長することを知っているのです。

 今年の9月には、これらの卓越した人々が、プラネット・ローカル・サミットのために英国の都市ブリストルに向かいます。このイベントは、企業主導の拡張主義の行き止まりの道への抵抗手段として、経済のローカル化を促進しようと活動する思想家と活動家の、史上最大の集結となるでしょう。 地球に根差した知恵と明確な政治戦略、草の根の事例と新しい世界観の種を結びつけるこのサミットは、私のように現実のシステム変化の可能性をいまだに信じている人々にとって極めて重要な瞬間となるでしょう。

 「現実のシステムの変化」という言葉は、曖昧で、ユートピア的で、時代錯誤的に聞こえるかもしれません。しかし、それはあなたが何と言おうと、既に起こり始めていますー時には私たちの目の前で。 アグリビジネスの巨大企業の力と利益にも関わらず、ローカル化された食料システムと活気に満ちたファーマーズマーケットは増加しています。 独立系ショップは、チェーン店の優位性に反発しています。 都市部でも農村部でも、ホリスティックヘルスセンター、コミュニティスクール、相互扶助ネットワークなどの代替機関は、大企業や肥大化した政府機関よりも人々のニーズを満たすことができることを証明しています。そして、相互依存の土地に根差したコミュニティを構築するための無数の積極的な試みがあります。これらの新構想が一体となって、人々がお互いのニーズを満たし、地球を大切にするのを助け合う、土地に根差した、活気に満ちた文化を再生しています。

 近年、特に新型コロナ以降、経済の分散化への熱意と支持が飛躍的に高まっています。 そしてこれは、ローカリゼーションの表すものが優勢な経済からの180度転換だという事実にも関わらず起きています。優勢な経済は、補助金や減税を大企業に提供し続け、企業に優しい規制を実施し続けています。 ボトムアップからの広範でしばしば魅力的でない闘争は、世界中の人々の善意、常識、そして強力な忍耐力を証明しています。

 プラネット・ローカル・サミットは、これらの驚くべき成果を祝うものです。しかしそれはまた、ローカルへの移行をサポートする構造的変化の必要性を高めることにもなります。 私たちは、右も左も、老人も若者も、北も南も同様に、グローバル企業による自由な暴利を抑えるよう団結した呼びかけを行います。そして、新しい経済に向けた戦略的政策の変更を要求する、急速に成長しているローカリゼーションの動きに力を与えるでしょう。

 私の見解では、この運動を妨げているのは何よりも意識の欠如です。企業メディアや学界の大部分でさえ、富と権力の組織的な上方移転について沈黙を守ってきました。その代わりに、私たちの注意は、有名人の文化や広告の気まぐれな気晴らしにではなくても、国を舞台にした政治の舞台芸術に釘付けです。

 ますます無力になっている各国政府がほぼ40年間続いた今、人々の政治的関心が微妙ではありますが地殻変動的な方法で変化し始めていることを私は願っています。既にそれが起こっているのを見ることができます。左翼と右翼の両方で、新しい理解が定着し始めています。大企業や銀行が経済や政府に対してあまりにも大きな力を持っていることに、世界中の人々がますます気づき始めています。これまで見てきたように、企業の力の増大は、私たちの生活のほぼすべての側面に影響を与えています。仕事、メンタルヘルス、環境、社会正義などです。世界経済がコロナショックにどのように反応したかを見てください。前例のない富の上方移転です。中小企業が一斉に閉鎖する一方で、企業の利益は急上昇しています。そして今、私たちは生活費の危機に瀕しています。おそらく、上げ潮がすべての船を持ち上げるというばかげた主張は、ぼろ船にトドメの鋲を刺すようなもので、一巻の終わりです。

 一方、補完的な理解が生まれつつあります。世界的な経済秩序が、うまくいかないほとんどすべての原因であるという理解だけでなく、うまくいくほとんどすべてのこと(人間と生態系の健康の回復にとって真に意味のあるすべてのこと)は、ローカルで起こっているという理解です。

プラネット・ローカル・サミットは、2023年9月29日から10月1日までブリストルで開催されます。詳細については www.localfutures.org をご覧ください。ヘレナ・ノーバーグ=ホッジは、以前は The International Society for Ecology and Culture(ISEC))として知られていたローカル・フューチャー(Local Futures)の創設者兼ディレクターです。

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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