立ちはだかる課題

リサージェンス誌は50年にわたって地球規模の課題を論じてきました。次の議題はなんでしょうか?著名人たちが自分の考えを寄稿してくれました。


解放

ジェレミー・シーブルック

不平等は前例がないほどのレベルに達しました。個人的な享楽のために計り知れないほどの資源を独占している人々と、日々の生活を維持することもできない人々が敵対しています。資源の分配という古くからの問題の再燃です。

 不平等は「永久に」経済成長し続けることによって解消されるというのは明らかな誤りです。むしろ、成長し続けることが問題の根本にあるのです。(富める人がさらに豊かになると、貧しい人はわずかにマシになるものの、両者の格差は広がります。)第二に、永久の経済発展というのが実現不可能な目標であることは明確です。人間の時間に「永久」などありません。このモデルが「開発」と呼ばれるものの基礎となっていることはおおよそ誰もが認めるところです。来る資源戦争を避けようとするのであれば、このモデルを考え直すことは不可欠でしょう。人々が自分たちのために、あるいは互いのために自由に作り、与え、考案し、提供するものを、人々を縛りつけてくる「自由」経済から取り戻すことができる解放のムーブメントです。人間の発展には服従ではなく解放が必要なのです。

ジェレミー・シーブルックの最新刊は「シャツの歌(The Song of the Shirt)」です。


都会の未来?

ハーバート・ギラーデット

ほとんどの未来学者は大都市が人間の主要なすみかになることを当然としています。巨大な現代都市は素晴らしい偉業ですが、地球上に広がった化石燃料による都市革命がエントロピーに左右されるということを忘れています。現代都市は生存のための資源を減らし続けています。つまり私たちは重大な矛盾に直面しています。人類は都市的な未来を築いているのに、現在の都市化のやり方ではまさに人類自身、そして地球の未来を脅かしているのです。

 開発途上国においては、都市に移住した村人は通常資源消費が4倍になりますが、それが環境にどう影響するかについて考慮することはほとんどありません。こういったことについて世界的な議論が必要でしょう。高いレベルで地産地消すれば人類の定住や発展はできるのでしょうか。依存している生存システムを再利用し続けることはできるのでしょうか?私たちはこのような存亡に関する問いに対する答えを、未来の世代に対して負っているのです。

ハーバー・ギラーデット「再生可能な都市をつくる(Creating Regenerative Cities)」(Routledge、2014年)から抜粋して編集。


非暴力運動

ビル・マッキベン

20世紀に蒔かれた種は、非常に大きな形で花開こうとしています。ガンディー、マーティン・ルーサー・キングのような人たちが、市民的不服従、非暴力直接行動、消極的抵抗と呼ぶような新しい技術で実験してきました。今、根っこからインターネットでつながっている世界で、現代の大いなる権力、つまり横領企業や全体主義国家、また効率の名のもとに人間性のきらめきを殺してしまう技術ファシズム等に対抗して、私たちはその新しい技術の使い方を学びつつあります。

 試合開始!

ビルマッキベンは長年の環境活動家です。


「150 語で未来の問題を明確にするのは、やや無理難題。だが、まさに思考の集約。」

– ジェレミー・シーブルック


グローバリゼーションに立ち向かう

ヘレナ・ノーバーグ=ホッジ

これから数年の課題は、世界経済を支える神話を解体することです。私たちが今日直面している数々の危機 ― 気候変動や原理主義、民主主義の分解等 ― は人間の本来の性質が原因ではなく、欲望、競争や激しい消費主義を煽る経済システムによるものです。私たちの政府は多国籍の銀行や企業にさらなる力を与え続けることでこのシステムを支えています。

 しかし、希望はちゃんとあります。経済のローカル化という実現可能な代替案を示すムーブメントが世界中で作られています。ファーマーズマーケットから、地域ビジネスの提携、分散化された再生可能エネルギーに至るまで、数え切れないほどの小さなイニシアチブによって、エコロジカルフットプリントを減らしながら本物の繁栄を増大させることができることが証明されています。

 「運動としての教育」に取り組むことでグローバリゼーションの基礎となる神話を取り除くことができ、地球規模で経済の化に必要なステップが可能になります。

 別の道があり得ます。そして人々は変わる準備ができています。

ヘレナ・ノーバーグ=ホッジは「地域の未来/生態系と文化のための国際社会 (Local Futures/International Society for Ecology and Culture)」の設立者で理事です。


環境

クレイグ・ベネット

人類が環境の限界の中で公平に生きる方法を見つけ出さなければならない時です。

 火の発見や自動車の発明、そして農業、言語、科学や技術の発展のような、進化の歴史の大きな出来事のひとつとなるでしょう。

 次の50年にわたって、力を合わせて、進化を阻む根本的な障害と戦う必要があります。前世紀私たちを忌々しい化石燃料の経済に縛り付けた政治や企業、そしてメディアエリートの勢力です。拡大する不平等、環境の退廃、持続不可能な消費等に象徴されます。

 2030年には、次の世代はより安全な気候、繁栄する自然界、健康的な空気、水、食物を享受できるはずです。

 イギリスは産業革命で世界をリードしました。今私たちは化石燃料の暴政から離れて緑の革命を促進し、21世紀の挑戦に適した社会を築かなければなりません。

クレイグベネットは「地球の友達 UK (Friends of the Earth UK)」の理事です。


The Challenges Ahead • Bill McKibben, Helena Norberg-Hodge, Jeremy Seabrook, Herbert Girardet & Craig Bennett

Bill McKibben, Helena Norberg-Hodge, Jeremy Seabrook, Herbert Girardet and Craig Bennett on the coming agenda for environmentalists and campaigners for social justice

296: May/Jun 2016 

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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