風力発電は誰のもの?

北海は長い間、地域経済を支えてきたが — 洋上風力発電が再生可能エネルギーの代表格となりつつある今、その恩恵を受けているのは誰かとジェームズ・マリオットが問う。

翻訳校正:沓名 輝政

北西の強風が吹き荒れ、アバディーンシャーのポートソイ港に設置された大テントの重い白い塩ビを揺らしています。テントの一角には、文字やロゴ、地図や画像を印刷したローラーバナーがずらりと並んでいます。モレー・ウェストの市民説明会チームを代表して、20代の警戒心あふれる髪型の男性が、戦闘態勢で立っています。風に身を縮こませている半ば無関心な聴衆を前にして、インヴァネスの東、マレイ湾のはるか彼方に建設が進むモレー・ウェストの風力発電所がもたらす大きな利益を説明するのが彼の仕事です。

 展示には、すべてのデータが示されているようです。ケイスネスの沖合、水深46mの海底に、ブリストル市と同じ広さの285km2に65基の風力タービンが設置される予定です。これは、スコットランドのエネルギー需要の30%に相当します。また、最大64万世帯に電力を供給し、毎年110万トンのCO2を削減できるといいます。このプロジェクトでは、ポートソイの東に位置するバッキー港を拠点に、60人の従業員を雇用する予定です。この明るい未来は、すべて明らかなようです。

 しかし、この計画の背後にいる実際の人物を突き止めることは困難です。誰がやっているのか?配布された資料をよく見ると、このプロジェクトは Ocean Winds 社が手がけていることがわかりますが、実際のところ、Ocean Winds が何者なのかはよくわかりません。

 EDP Renewables は、ポルトガルの石油・ガス会社である Energia de Portugal(EDP)自体が所有し、 EDP には、中国三峡集団、ブラックロック、Oppidum Capital SL、カナダ年金基金投資委員会、アムンディ・アセット・マネジメント、ノルウェー銀行、カタール投資庁、ソナトラックおよび「残りの株主」が出資していることが後で分かりました。

 ブラックロックは世界最大の投資会社の一つです。特にBPの単独最大株主であり、化石燃料への投資で常に批判を浴びています。アルジェリアの国営石油・ガス会社ソナトラックもそうです。

 そして、土地の所有権の問題が出てきます。風力タービンが立つ海底は誰のものなのか。ケーブルが海岸に到達した後、横切る農地は誰のものなのか。いずれも、今回の市民説明の展示では明らかにされていません。

 海底は国王チャールズ3世、つまり王室不動産に属しており、プロジェクト期間中は Ocean Winds に海底の権利をリースすることで賃料収入が発生します。英国王室は地球上で6番目に大きな土地所有者であると言われており、この収入はポートフォリオのほんの一部に過ぎません。 

 つまり、風を利用したこのシステムは、国際的な企業にも利益をもたらし、英国王室とスコットランドの貴族にも収入をもたらすのです。

 これは確かに低炭素エネルギーかもしれません。しかし、私たちが驚くべき速さで移行しようとしているこのシステムのどこに正義があるのでしょうか?

 これは、Platform[アート、社会活動、教育、研究を統合した組織で、社会・環境正義のニーズを動機とするプロジェクトを生み出しいる]に掲載された記事を編集したものです。Jane Trowell、Annie Brooker、Terry Macalister、Emma Hughes、Mika Minio-Paluello、Anna Markovaに感謝します。 www.platformlondon.org

ジェームス・マリオット(James Marriott)は、アーティスト、活動家、自然主義者で、Platform の一員として活動している。テリー・マカリスター(Terry Macalister)との共著『Crude Britannia: How Oil Shaped a Nation(巨大石油企業が動かす英国の過去、現在と未来)』がある。

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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