本物の宝物

大粒のエメラルドに複雑なスカラップが施され、健全さと高級感を同時に感じさせるグリーン。これは、露天掘りで岩の層から取り出したり、高圧の水を使って地上に吹き出したりした宝石ではありません。この宝物は生きている。蛾です。

 この蛾は、Hilltown Organics が何家族かを敷地内に招き、野生生物に有益な草花の名前を教えていたときに見つけた多くの大切な昆虫たちのひとつです。デボン州にあるこの小さな農場は、豊富な種類の野菜を栽培するだけでなく、イラクサや森林、生け垣など、野生生物のためのスペースがたくさんあります。「アザミ、クロイチゴ、イラクサは何のためにあるのでしょうか?花粉媒介昆虫、蛾、蝶、甲虫、鳥など、何千もの生物の食草なのです」と、農家のマーティン・ゴッドフレイ(Martin Godfrey)は言います。「英国には1,500種もの蛾が生息しているのです。この素晴らしい夜の生き物の食草を理解すれば、私たちが迷惑な雑草と考えるものへの敬意も違ってくるかもしれません」

 「敬意が違ってくるには」物質的な豊かさから、豊かな自然への感謝へと、考え方を変えることが必要です。「自然の価値は(精神的、文化的、その他、私たちが値段をつけられる物事を超えているが)、無視され、私たちは危機に瀕している」とアドリエン・ブラー(Adrienne Buller)はエコロジストのコーナーで書いています。この転換の緊急性は、刻一刻と増しています。私は、英国で記録的な暑さを記録して間もなく、これを書いています。化石燃料への依存によって推進されてきた私たちの生活様式は、この暑さに参っています。

 今号のリサージェンス&エコロジストでは、私たちの生活の中で最も変化の必要性が高い分野である農業を訪ねます。命のつながりのコーナーでローマン・グーゲン(Roman Goergen)は、ポルトガルの再野生化プロジェクトに誘い、EUの農業補助金が土地に及ぼす影響を見せてくれます。ニコラ・カッチャ(Nicola Cutcher)は酪農業の倫理を精査し、エドワード・デイヴィ(Edward Davey)は作家アンナ・ジョーンズ(Anna Jones)にイギリスの都市部と農村部の文化的な隔たりについて話を聞いています。テーマ別のコーナーでは、世界で最も収益性の高い国際商品のひとつとなったコーヒーと人間との関係を探っています。また、書評では、ジョージ・モンビオット(George Monbiot)の最新超大作『Regenesis: Feeding the World without Devouring the Planet(新たな創生:地球を食い尽くすことなく世界を養う)』について、2つの見解を紹介しています。

 本当の宝物は、破砕によって探し出されるものではありません。足元の岩の中でねつ造された冷たい、生きていない物体ではないのです。値札をつけたり、金庫にしまっておいたりするようなものでもなく、蛾の羽のように幽玄で儚いものであり、同時に私たちが複雑に織りなす生命のサイクルの一部でもあるのです。

マリアン・ブラウン

リサージェンス&エコロジスト誌の編集者

(翻訳校正:沓名 輝政)

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リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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