成長の痛み

モリー・スコット・カトーが私たちの経済モデルに疑問を投げかけ る 2 冊の本を解きほどく。

翻訳:馬場 汐梨

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脱成長を求めて:決定的手引き

ヴィンセント・リージ、アニトラ・ネルソン著

Exploring Degrowth: A Critical Guide

Vincent Liegey and Anitra Nelson

Pluto Press、2020 年 ISBN: 9780745342023


ポスト成長の生活:オルタナティブな快楽主義のために

ケイト・ソーパー著

Post-Growth Living: For an Alternative Hedonism

Kate Soper

Verso、2020 年 ISBN: 9781788738873

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私たちがすべてのものを新型コロナウィルスのレンズを通して見なければいけないという重荷に耐えなければいけな い一方で、経済が人間の健康を最大化するためにデザインされているのかどうか、またどのようにデザインされてい るのかという問題について異なる視点で注目した 2 冊の本が、その製作途中に起きた地球規模のパンデミックから挑 戦を受けることは避けられないように思われます。 ある意味ではこれは強みです。なぜなら、両方の本の中心的なメッセージ(私たちは成長を中心のメカニズムに据 えている経済を早急に再設計しなければならないというメッセージ)は、生と死に関する根本的な問題が日常的に向 かってくる 1 年の後で、より熱狂的な読者がつくと思われます。 『脱成長を求めて』の中で、ヴィンセント・リージとアニトラ・ネルソンは、経済成長に抗議して逆行する学術的 な運動、近年盛んになってきた運動についての調査を提供します。30 年にわたって私が一端を担ってきた政治運動に ついての学術的な調査を読むことは興味深い体験でした。そして、私が計画を手伝った 2018 年に開催された欧州議会 の最初の脱成長会議についての記載にも同じくらい感動し、楽しめました。 歴史的説明から最も私の心を打ったのは、脱成長の運動がどれだけ長い間発展してきたかということです。1972 年 にフランス人社会学者のアンドレ・ゴルツが脱成長という言葉を作ってからです。「カタツムリの戦略」とは本当に よく名付けられたものです。そのゆっくりとした成長は、80 億の世界の人々が平均的な北米の高エネルギーな生活を するようになるだろうという考え(ありがたいことに今日では思い違いだったと思われますが)に基づいた 2010 年 の本『Ferraris for All(みんなにフェラーリ)』によって示された強い既得権によるものです。 では、もしそれが速い車ではないのであれば、私たちはどのようによい暮らしを要約できるでしょうか?歴史が現 実の生活の一部であることが、老いることの疑いのない利点のひとつですが、1970 年代は食べ物の味や衛生面は極端 に低かったものの、エンパワーメントや自由は非常に感じた時代として私は覚えています。人々がより少ない消費商品を求めていたにも関わらず、1976 年ごろに持続可能な福利の指標(GDP 成長に置き換わるものとして提案された基 準)のピークが訪れたのはちっとも驚くことではありません。。。(以下略)

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モリー・スコット・カトー(Molly Scott Cato)はイングランドおよびウェールズの緑の党の金融スポークスマンで、 前欧州議会議員です。

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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