流れを変える

翻訳:沓名 輝政

河川は、何千年にもわたって地上の環境を形成してきました。水源から海に至るまで、岩や土の中に道を切り開いてきた淡水の動脈です。河川は生命をもたらすが故に、干ばつや洪水のようなあらゆる種類の混乱は、生命を奪います。これを書いている今、暴風雨はイングランド全土で洪水を引き起こしました。河川の堤防が決壊し、家やインフラに損害を与えました。これは、今後来たるべきものの一端に過ぎません。研究によると、気候変動によって大雨が降る確率が 40% も上昇する可能性があるとのことです。河川は、何千年もの間、人類に家を構えるのに適した場所を提供してきました。今、私たちはかつてないほどに地上の環境を微調整するようになりましたが、増水した水路が最も大きな混乱を招くことになりました。ウェンデル・ベリーの言葉を借りれば、「人がダムを作って湖を作ったと言っても、それは川であることに変わりはない。川はその性質を維持し、わずかな突破口を抜け目なく狙う檻の中の動物のように、その時を待つだろう」。

 その他にも人間への影響があります。汚染や、河川を健全に保つのに役立つ他の生物のためのスペースの減少です。自然との関係がほつれるほど、私たちをつなぐ糸はますます貴重なものとなり、世界中の人々が愛する川を守るために戦い、勝利を収めています。今号の「リサージェンス & エコロジスト」では、そのような活動をしている人々の一部をご紹介します。ヴァンダナ・K(Vandana K)はインドの草の根活動を調査し、ニコラ・カッチャー(Nicola Cutcher)はイギリスのイルクレイでの市民科学者による最近の勝利を祝います。リ・アン・フォア(Li An Phoa)はムース川を歩き、デレク・ガウ(Derek Gow)はビーバーをイギリスに連れ戻しました。

 私たちの多くがまだ新型コロナウィルスの暗雲の下で孤立して生きている中、ジュリアン・アベル(Julian Abel)は思いやりの心を持つことがなぜ私たちにとって良いことなのかを説明し、ラッセル・ウォーフィールド(Russell Warfield)はルター・ブレッグマン(Rutger Bregman)に自身の著書『Humankind』について話します。芸術コーナーでは、ルイーザ・アジョア・パーカー(Louisa Adjoa Parker)が詩人で看護師のロマリン・アンティ(Romalyn Ante)に移住についてインタビューし、介護業界が彼女の人生とフィリピンの家族の人生をどのように形成してきたかを語っています。

 これらの話が、春のつぼみやワクチンのように、暗闇を照らす助けになることを願っています。

 もう一つの、もっと悲しい、生命の追悼として、過去 40 年間に渡ってリサージェンスを支えてきた英知と才能の持ち主であるピーター・アブス(Peter Abbs)氏の逝去のニュースをお伝えしますが、とても残念です。寂しい限りです。

マリアン・ブラウン は、リサージェンス&エコロジスト誌の編集者です。

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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