非暴力の心からの反逆

スキーナ・ラソアは愛は世界で最も戦略的な力であると書いています。

翻訳:沓名 輝政

一つのムーブメントとしての「絶滅への反逆 (Extinction Rebellion)」は、地球とそのすべての素晴らしき生命の必要性を求める愛の具体化された実践として、非暴力の市民的不服従の力を用いています。ガンディーとマーティン・ルーサーキングの業績、そしてマーシャル・ローゼンバーグの非暴力コミュニケーションや平和的コミュニケーションは「絶滅への反逆」を発展させる基準点です。

 現代の政治、宗教的な教義、そして文化全般が、非常に暴力的な言葉を生み出してきました。私たちは、私たちの価値観と調和して行動しない人々の側に、誤ちや悪意があるという道徳的判断にとらわれています。「他者」の行動を分類し、その原因を判断することに私たちの注意を集中するのは、非難し、恥じるためであり、私たちが失ったものは、自分の感情、正直さと誠実さをもってお互いに対応する必要性ならびに能力です。このようにして世界にいるということで、断絶、不快感、分離、無力感といった結果として生じる感情に対処し得るために、私たちの心の周りに要塞を作り出しました。本質的に、私たちは絶え間なく内外の対立をしており、日々微暴力の下で苦しんでいます。

 戦争の言葉がどのようにして「平和的」社会活動を支配しているのか、私たちはほとんど気づいていません。私たちの駆け出しのムーブメントの中の苦闘と脆弱性を私に告白させてください。時に私たちは共同作業とは「味方」を作り上げることだと説明してきましたが、それから私たちの真実を探ることを通して私たちは、実際には親戚を作り上げ、私たちの関係を受け入れるように、全人類の家族を織り直す必要性を発見したのです。私たちの条件付き分離という言葉の根底は、化学物質が私たちの土壌と水を汚染しているのと同じくらい深いです。

 「絶滅への反逆」の戦略に従って、「オヴァートンの窓 [容認が可能な範囲]」をシフトさせると、現在の機能不全パラダイム(暴力的な言葉で囲まれている)もシフトしようとします。なぜなら、現実には自然、精神、社会の間に細分化がないからです。それらは一つの統合された全体です。通常の政治的対話をシフトせずして自然界に対する私たちの価値体系を変えることはできません。また、精神的および道徳的対話をシフトすることなく政治的対話を変えることはできません。そうすれば、もはや私たちは善と悪の仲裁人として行動することはできず、代わりに私たちを分けるすべての間で平和の形成者になります。

 今日の「絶滅への反逆」の内外で、夜明けのコーラスのように美しく明確に感じるのは、内外のプロセスとしての非暴力的な言葉や思いやりのあるコミュニケーションの能力を育成することで、人々の心への扉を開く関係を築けたということです。心の例としては、私たちの 11 日間の大衆抗議の間の警察官の心があります。これだけでなく、また私たちが解放したのは、個人的で集合的な好奇心、想像力と創造性、それゆえの望みでした。ジョアンナ・メイシー (Joanna Macy) が 「グレート・ターニング (The Great Turning)」と説明するものへの移行にふさわしい言葉を共創するという望みです。

 目撃者として、あるいは逮捕者として、私たちは言葉と行為の両面で「絶滅への反逆」の非暴力的な市民的不服従の経験によって変わります。変革の最先端と、これが必要とする非暴力的な言葉が目に見えています。

 その良い例が「心の線」の説明です。ロンドンの私たちの拠点での不服従の淵に立つ人々の列は最前線ではありませんでした。彼らは一体となった心 — 私たちの心の線 — でした。私たちがチョコレートのイースターエッグと花を手にしてジェレミー・コルビン [イギリス労働党党首] の柵にへばりついたとき、私たちは「占拠」や「愛の爆撃」ではなく、愛のシャワーを降り注いでいました。私たちが人々をムーブメントに引き入れ、直接行動をとる反対者として訓練するとき、言うこと為すことすべてにおいて、非暴力的コミュニケーションの価値、原則、実践について学ぶのです。

 合わせて、私たちは非暴力のより包括的な言葉で探求し導いています。不服従のためにこの言葉をさらに構築するには、この言葉を話そうとする勇気が湧く所からの心の知性の存在が必要です。転換点、パラダイムシフト、完全な転換に伴い、非暴力的な言葉を徹底的に使うことです。

 この文明の崩壊の淵にいると嘆く今、変革の淵に到達したと私たちの喜びを讃えることもできます。私たちは新旧のパラダイムの間の深淵に立ち、橋を築き始めました。今日「絶滅への反逆」は、私たちの親戚と共に、橋渡し役として行動する許可を得ています。非暴力的な言葉を不可欠な道具とすることで、私たちは自分たちの相互関係性の実現を速め、私たちが愛するもの、私たちを愛して持続させるものを保護し育てる本能の記憶を加速させるのです。

スキーナ・ファインボウ=ラソア (Skeena Finebaum-Rathor) は「絶滅への反逆」のビジョンコーディネーターであり、労働評議員です。 

315: July/August 2019

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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