勇気

翻訳:佐藤 靖子

 今私たちはこれまで以上に、変化を生む勇気を奮い起こす必要があります

 気候に対する不安について人と話をすると、たいていの場合、私たちは同じ経験をしています。最初は大きな無力感を感じ、手に負えないこともあります。けれども多くの場合、この後に断固たる決意の感覚が生じます。おそらく、これが勇気が沸いてくる場所です。ハーパー・リーのアティカス・フィンチ曰く、「行動する前から叩かれてしまうこともあります。それでも行動する」のが「ほんとうの勇気」です。今私たちはこれまで以上に、変化を生む勇気を奮い起こす必要があります。

 英国のヒースロー空港からドイツのハンバッハの森、フランスの Zone to Defend[空港建設反対運動]、そしてますます広がりつつある非暴力運動の Extinction Rebellion まで、本号で特集している世界中の平和的な活動家のアクションは、大きな不安が楽観論や希望に変わりうることを示しています。

 もちろん、これを行う方法は非暴力の抗議だけではありません。「エコロジスト」のセクションでナタリー・ベネットはこう述べています。「全ての人に役割があります。ソーシャルメディアでアクションを推進することや家族や同僚の質問に答えることから ・・・ デモ参加者らにキッシュやケーキを焼くことまで ・・・。」「芸術」のセクションではアリス・ケトルが、素晴らしい布の風景や刺繍の「森」を作り「他に例を見ない行動主義」を形成する、難民や庇護希望者や関係者を一つにするプロジェクトについて書いています。「私は一人のアーティストに過ぎず、こうした問題を解決することはできません」と彼女は書いています。「でも、私が気に掛けているということは示すことができます。」

 未来が最悪のシナリオとなる必要はありません。そしてもし私たちが一丸となって取り組むことができるなら、それは何か祝うべきことかもしれません。「基調」の特集で、ケイト・ピケットとリチャード・ウィルキンソンは、今社会をだめにしている不公平に対処することによってこれを可能にする方法を示しています。「多くの人々がそれを達成すると決心した時のみ、必要な規模の変化を生み出すことができます」と彼らは書いています。

 「私達は、自分たちの惑星を破壊していると知っている最初の世代であり、それについて何かができる最後の世代です」と、WWFイギリスのチーフエグゼクティブのタニヤ・スティール(Tanya Steele)は10月の「生きている地球レポート」発行の際に述べています。2018年末は気候崩壊の現実が主流をうちのめした瞬間として記憶されるかもしれません。2019年が私たちが物事をよい方向に変化させ始めた年として知られるようになるチャンスはまだ残っています。

マリアン・ブラウン

副編集長

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Courage • Marianne Brown

Now, more than ever, we need to muster our courage to make change

312: Jan/Feb 2019

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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