繁栄する食のシステムへの共通の道筋

フィリップ・リンベリーは、どのように工業的農業がありのままの自然を脅かすかをマリアンヌ・ブラウンに語る

翻訳:坂井 晴香

とある土曜日、あなたはフィリップ・リンベリーを見かけるかと思われます。彼は活動の慈善団体 Compassion in World Farming (CIWF) の最高経営責任者。ハンプシャー州ピーターズフィールドの彼の自宅の近くにあるカフェでむしゃむしゃとハンバーガを食べています。しかし全てがありがちのものではありません。

 「なかなか目新しいことなのです。なぜならここの製品は、チキンナゲット、チーズクォーターパウンダーといったマクドナルドで見つけられる食べ物を模倣し、同様に売られていても、全て植物由来のものなのです。」と彼は話します。

 彼は実際にマクドナルドのハンバーガーを食べることになりますが、成果を上げようと、この10年以上同社と一緒に働いてきたというのが彼の話に最も近いでしょう。

 「驚くほど変化について対話をするようになったと私は感じます。」と彼は語りました。

 「イギリスや西ヨーロッパにおいて、平飼いの卵だけを使い、イギリスでは温かい飲み物に使われる全ての牛乳が有機飼料で育てられ、肉牛は放牧された家畜です。また、アメリカではケージなしで育てる卵のみに取り組んでいます。」

 動物の福祉、人間の健康と環境へのダメージを強調することで集約農業の実践を終わらせるというミッションのもとに、CIWFがこの10年協働してきた、800もの食品企業のうちの一つがマクドナルドです。最近、この組織は絶滅危惧種の脅威に関わるもう一つの危険性を警告しています。

 2014年に出版された彼の著書「Farmageddon」を売り出していた時に、南アフリカのボルダーズビーチを訪問し、繋がりを作ることができたとリンベリーは語ります。

 「私はアフリカンペンギンを見に行きたかったのです。」と言います。「ビーチにいる間、ピルチャードとアンチョビの乱獲による食糧供給の減少が、ペンギン絶滅の主な脅威となっていると書かれた看板を見ました。工業的農業向けのアンチョビ漁を太平洋で見るという活動をして気付いたのですが、かつて栄えたアフリカンペンギンが絶滅の危機に瀕している理由は、工業用家畜を養う魚肉を粉砕するために小さな遠洋魚を大量に収穫しているからです。それがペンギンを追い出し、それと同時に北半球のツノメドリを飢えさせています。工業的農業、家畜のケージ飼い、象徴的な野生動物の死滅の間に、いかに多くの明確な連動があるものかと深く考えさせられた繋がりでした。」

 それは環境保護主義者たちにめったに語られることのなかった繋がりでした。「なぜなら彼らの懸命な努力が不十分だったから。」とリンベリーは言います。「環境保護主義者の中には、肉製品、とりわけ工業的に育てられたもの、そしてその自然環境への影響に対する否定をする人もいます。ところが、家畜を工業的農業に押し込むという考えを、空間を節約することによって野生動物のための空間を残すことができるとあまりに多くの環境保護主義者たちがみなしています。しかし、それは真実からは程遠いのです。なぜなら家畜をケージの中に閉じ込めてから、私たちがすべきことは、家畜の飼料を育てるために耕作可能で広大な土地を提供し、農作物の価値をほぼ台無しにしながら、肉製品や乳製品、卵に変えているからです。私にとってそれは食卓に上がる狂気の沙汰です。」

 3年がかりの調査によってリンベリーが導き出した発見は「Dead Zone」という本となりました。「人やイベントの点と点をつなぐ」沢山の方法を見つける必要があるという、消費者からの視点に、その過程で彼とその仲間たちは気付きました。

 「人々は動物をケージの中に入れることが残酷だと考えますが、しかし家畜をケージに入れることは残酷なだけではなく、ペンギン、象やジャガーの死滅に結びつくというのは、より複雑な話です。」と彼は話します。そうして、参加型スピーチ、「STOPTHEMACHINE(機械を止めて)」という対話型の展示、ロンドンにおける二日間の会議を含めた包括的なコミュニケーションキャンペーンを始めることを団体として決めました。

 「実際のところ工業的農業が野生動物の減少の主な要因となっているというメッセージを広めたかったのです。私たちは、グリーンムーブメントの担い手として、その先鋒になり、手遅れになる前に食い止める必要があるのです。」とリンベリーは振り返ります。

 世界自然保護基金との連携によって開かれた「Extinction and Livestock(絶滅と家畜)」という会議は変化を訴えかけるイベントとして告知されました。そこで、集約的農業の影響や「食のシステムの養育」に向けた行動方法を議論するために、環境保護主義者、農家、健康の専門家、マクドナルドやテスコといった食料分野の多国籍企業の代表者が一堂に集いました。。。

(全文は定期購読にてご利用ください。

。。。 変化を起こしたい人誰もが、マクドナルド方式の中にビーガンハンバーガーを求めているわけではないものの、CIWFでのリンベリーとその仲間たちの活動がこのメッセージの緊急性を力強く訴えています。

マリアンヌ・ブラウン (Marianne Brown) はリサージェンス & エコロジストの副編集長。「Dead Zone: Where the Wild Things」は2017年にBloomsburyより出版。

A Shared Path to a Flourishing Food System • Marianne Brown

Factory farms are threatening nature in the wild

307: Mar/Apr 2018

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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