自然と働き、共に働く

翻訳:馬場 汐梨

私にとってリサージェンスで働くことの喜びの一つは、改修された農場の建物の中にある事 務所から近くにあるハートランドの村へ、並木道に沿って少し歩くことです。冬には、近く の海から吹き込む風や、あらゆる方面から降り注ぐような特に強い雨によって、自然本来の 力を思い知らされます。そして人間性や日々の心配事を全体的な視点で捉えられるようにな ります。また1年のこの時期は、空気を満たす鳥の鳴き声を聞くのが特に楽しみです。いつも の仕事が活性化され、平凡な悩みはなくなり、精神は高揚します。 その心地はどこか今号の内容、自然の中で、自然と共に、自然のために働くというテーマ を示唆しています。筆者たちはそれぞれ自分たちのやり方で、自然界の重要性やそれに対す る個々に異なるアプローチ、そして私たちが集団で直面している問題を解決するための新し い方法を見つける義務について熟考しています。 ジェームズ・ソーントンは、禅宗の精神修行と法律家としてのバックグラウンドが相まって、 環境法に職業人生を捧げることに目覚めました。トニー・ジュニパーは、環境保護への情熱 と長年の環境運動家としてのキャリアに導かれて、自然界が自分たちの生存にとってどれだけ 主要なのかと私たちが認識すると一番自然界を守ることができるのだと信じています。 しかし自然を中心にすることは、私たちがつながる必要がある自然界との関係だけではありません。私たちのお互いの関係性も です。ですので今号では、イギリスの最も成功している有機農家のガイ・シングワトソン(Guy Singh-Watson)は、なぜ自分のビ ジネスを生活協同組合に変えたのかを説明し、またダレン・マクガーヴェイ (Darren McGarvey) は、都市部のグラスゴーで生まれて いる新しい形のコミュニティ活動を紹介しています。 いつも通り、これらの新しい出発、新しいつながりには芸術的な面があります。ジャスティン・ライリーはレア・バークレイが 自然界の音を初めての人たちに聞かせている取り組みについて話しています。アレクサンダー・チャップマン・キャンベルはノル ウェーの田舎を巡礼していた時にどのように新しい曲を思いついたか述べています。そして芸術家のギャリー・ファビアン・ミ ラーがカメラなしの写真技術とテキスタイルデザインを融合させて自然界との深い関係性を呼び起こした様子を見ていきます。 ヴアンダナ・シヴァは伝統医療の重要性を述べています。その一方で、ポーラ・バーンとジョナサン・ベイトは人間の文化、中 でもスローリーディングの健康効果を気づかせてくれます。そしてスコットランド人作家のジェームズ・ロバートソンは短い話の 中で、現代技術を超えて人間のコミュニケーションの喜びを再発見することの価値を表しています。変わりゆく季節の中で、私た ちが生み出すつながりを楽しんでいただければと思います。

グレッグ・ニール 編集長

Working With Nature, Working Together • Greg Neale

Reflecting on the importance of the natural world

308: May/Jun 2018

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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