人のパワー

エネルギーは、私たちの身体やライフスタイルを支え、私たちの存在を定義しています。エネルギーは地球の生命システムの中心にあり、全宇宙の基本的な構成要素です。しかし、エネルギーの使い方を誤ると、今日私たちが直面している最大の問題の核心に触れることになります。地球規模、産業規模での炭化水素の燃焼は、気温を記録的な水準まで上昇させています。火災や洪水は世界中で発生しており、最も影響を与えなかった国々が最も高い代償を払っています。ヨーロッパでは、ガス代や電気代が高騰し、生活費が危機的状況に陥っている一方で、エネルギー会社が嬉しくて目が潤むほど莫大な利益を上げ続けています。多くの家庭が暖をとることができなくなったため、フードバンクだけでなく、ヒートバンクも存在します。

 私たちがエネルギーを消費する方法は、経済的、社会的、政治的な問題なのです。化石燃料への依存によって地球が破壊されるのを食い止めるには、再生可能エネルギー(太陽光、風力、波力)に移行する必要があります。この力を解放するために、私たちは地域社会に力を与える必要があります。さもなければ、不平等を悪化させる経済システムに拍車をかける危険性があります。

 皮肉なことに、私たちは危機の渦に直面すると、しばしば気力を失い、無力感を感じることがあります。どうすれば、このような嵐を個人で食い止めることができるのでしょうか。これは、以降のページにインタビューのある『Active Hope』の共著者クリス・ジョンストン(Chris Johnstone)が語る「未来に対する希望の風土病のようなもの」です。このようなときこそ、ジョンストンが言うところの「予期せぬ回復力」、つまり、自分では気づかないレベルの強さを発揮することができるのです。このエネルギーの高まりの中心は「希望」です。物事が良くなるという感覚ではなく、私たちが向かうことのできる方向性です。この『リサージェンス&エコロジスト』特集号では、そんな希望の旅に皆さんをお連れしたいと思います。

 エコロジストの編集者であるブレンダン・モンタギューが、ビッグバンから生物学、経済学まで、私たち人類にとってエネルギーとは何かということを探求し、私たちの道を切り開いていきます。「ある生物から別の生物へ、ある種から別の種へのエネルギーの伝達が、生物圏を存続させているのです」と彼は書いています。「エコロジスト」のコーナーでは、政府の政策について、戦争を背景とした原子力の役割、エジプトでのCOP27に向けたネットゼロ目標のハードルなどについて考察しています。次に「命のつながり」のコーナーでは、化石燃料の採掘が植民地主義に深く根ざしていること、そしてそれに対して私たちができることを紹介し、さらに続くコーナーで、公正な移行において、コミュニティをどのように構築すれば良いかを語っています。本誌の後半で、私たちは、物質的な世界におけるエネルギー消費との問題関係を表現し、集団行動から菌類の言語や堆肥の理解まで、私たち自身の生活にポジティブなエネルギーを注入する方法を見出しているアーティストに出会います。

マリアン・ブラウン

リサージェンス&エコロジスト誌の編集者

(翻訳校正:沓名 輝政)

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リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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