僕の掴んだアルゴリズム

マット・ハーヴェイ (Matt Harvey) の理解では現代の資金調達方法は妙に不安にさせる。

インターネット誕生から、孤独の本質というものが変わりました。スマートフォンは、僕らのポケットにインターネットを突っ込んでいるようなもの。かつて僕は、飼い犬のテスとビーチを歩きながら、素晴らしい isolation(孤独)、それだけを味わったものです。それが今では、素晴らしきiSolationを楽しみ、iPhoneのiTunesから両耳へと音が注がれ、電子犬iPupと興奮状態の海で、 電子の波iPaddleに戯れるのです。ピー!というアラート音で中断を余儀なくされるまでですが。

 これは歓迎すべきアラート音だと付け加えるべきですね。これもインターネッツ的事象のひとつで、僕たちのKickstarterキャンペーンの進行状況を知らせる音なのです。クロエ(プロデューサー)とトーマス(コンポーザー)と僕は、Kickstarter.comというサイトを使って、エコミュージカルシアタープロジェクトのクラウドファンディングを募りました。これはそう簡単なことではありません。   

 初公演の開催地が、最初のトランジションタウン、トットネス(僕の住む街)だからでしょうか、プロジェクトの仮題『ミュージカル:トランジションタウン (Transition Town: The Musical)』は、こんな混乱と共に受け入れられました。「トットネスに関するミュージカルだって?」「いや、トランジションに関するものなんだ。初回公演がトットネスで行われるんだ」「ああ、じゃあトットネスが舞台ってことだな」「いや、舞台は想像上の街なんだ」「へえ」そしてここで懐疑的に、「『ミュージカル:トランジションタウン』ねぇ?」「そうさ」「本気?」「そう、本気」「プロデュースは誰がするわけ?」「えーと、色んな人が…」「色んな人ぉ?」…僕らの街では「本気?」位の捉えられ方だけど…ええと、他所の地域だと「本気ぃ?!?」くらいの反応なのです。

 懐疑的になるのは無理もありません。差し迫った必要性が背景としてある中、トランジションタウン・ムーブメントの持つ幅広さと大望を一体どうやって伝えるのか、しかもミュージカルで?誤って伝えてしまうのではないか?僕たちは、どうするべきか分かってはいないということをここで告白します。一方、僕たち全員の人生をよりシンプルにするために、代替案のタイトルを使うことにしました。『スイムバイ:私の裏庭の素晴らしきもの (SWIMBY: Something Wonderful In My Back Yard) 』。この方が明確、だろうか…?

 僕の頭の中には、ベン図があります。大規模な人数で構成されるグループがいて、このグループは気候変動や石油資源への依存を懸念し、通常、実用的なステップに関心があり、頭を悩ませる人々は反応として選択できます。それ故『トランジションタウン』です。また、大規模なグループで、ミュージカルシアターに対して無条件の愛を持ったグループがあり、『Andrew Lloyd Webber(アンドリュー・ロイド・ウェバー)』を生み出しました。僕たちのプロジェクトでは、このふたつのグループが重なり合う部分というのを見つけることができるのか、はたまたそれは存在しないのかを見出します。双方のグループに属する会員同士は互いを排除し合うのか、そしていずれかのグループは、大規模ではないけれど十分に大きな第3グループ(スイムバイを支持する人々)を取り込むことが可能なのでしょうか?

 人というのは予測不可能なもの。そうですよね?僕が見つけたこのサイトの奇妙な点というのは、予測機能が付いているということです。最初の寄付が入ると、アラート音と機械のブーンという音ともに、見込みの達成数値を示します。そして、それより尚、奇妙なのは最終日に近づくにつれ、更に確実な早期予測が示されるという点です。

 これがあなたのクラウド、群れなのです。僕たちはそれぞれ個々人が、自己決定を下せる自立した分子になるべきだと感じています。これを波のようなひとまとまりとして捉えると、異様なことに僕たちの存在は予測可能です。動揺してしまうくらい、そうなのです。僕など動揺しすぎて、犬ロボ並の下手くそな詩まで書いてしまったほどで、もしかしたらミュージカルでも、取り入れてしまうかもしれません。

群衆官制からトム少佐へ

群れに交わる際にはご注意を

分子が波となる時には

僕らの行いはやつらに読まれてしまうんだ

なぜならどこに行こうとも、僕らが人であることに変わりはない

アラスカからイースト・ロージアン

メッカからWestward Ho!まで

僕らは皆かなりパブロフ的だから

コントロールされ、言いなりだ

僕らはそれぞれがとても独立しているように見えるけど

そして奔放に生きているけれど

計画などせず行動するけれど

群れ、一群、大群の一部となるとすぐに

 僕らは従属してしまう

その時々のお題に合わせるように

ややこしいアルゴリズム的方程式で、僕らは予測される

そして僕らは影響され、つまみ上げられ、説き伏せられてしまう

誘導され、操縦され、徴発される

抑制され、細分され、、、丸め込まれ、整頓されてしまう

そして僕らは封じ込められる

家畜のごとく

それでも僕は喜んでこれをお伝えしよう

僕らの主張が称賛または痛罵されようとも

無視されない群れもあるだろう

また、聞き入れられるまで、押し寄せる大群もあるだろう

今や僕の中からエンドルフィンが溢れてくるようです。僕らの群れは、大群となりました。この一群は勢い込んで押し寄せてきた訳ではありませんが、物腰やわらかに目標に向かって歩を進め、ちょうどアルゴリズム的預言者のお告げのようになったのです。勿論、この歌が素晴らしいものになるかどうかは、予想が付きません。しかし、ここは先立って決められたことに対して、決意が打ち勝てる場所なのです。アルゴリズムの奏でる音楽で踊れないなら、それを素晴らしいものに変えようと決意するだけなのです。

マット・ハーヴェイ(Matt Harvey)は『The Element in the Room』の著者。

翻訳:齋藤 未由来

I Got Algorithm • Matt Harvey

Crowdfunding for the Transition Towns musical brings insights into human behaviour

290: May/Jun 2015

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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