「ヘイト資金を断つ」クリスマスメッセージ
マリアンヌ・ブラウンが、レイシスト、性差別者などの差別的なメディア記事に広告を載せないよう企業に働きかけている活動家と出会います。
翻訳:浅野 綾子
昨年のこの時期、クリスマスに間に合うよう、メーカーや小売業者がクリスマスシーズンの宣伝攻勢に弾みをつけた時、ストップファンディングヘイト (Stop Funding Hate) と自称するグループが作成した動画がソーシャルメディア上でシェアされていました。祝い事やお祭りの時期に流れる多くの広告のように感情に訴える形で作られたこの動画は、こう始まりました。「これはクリスマス用の広告ではありません。その広告についての話です」
この動画中、プレゼントを受け取って嬉しそうな人々のスローモーションのシーンに割って入るタブロイド記事欄の辛辣な見出し。そこに込められたメッセージはこうです。プレゼントに使われる多額のポンドが費やされるのは企業の宣伝広告。この活動家によれば、その広告の多くは、メディアの人種差別や性差別、ヘイト満載の記事の傍らに多くが掲載されるというのです。
すぐに動画の視聴は3百万回を越えました。2、3日の後、レゴは「Daily Mail」では商品の宣伝をしないと発表し、ザ・ボディショップもそれに続きました。これは、このグループが成し遂げた多くの成功の走りとなりました。昨年の6月には、クラウドファンディングのキャンペーンに成功。フルタイムのスタッフと調査費用に充てる10万ポンド以上の寄付が集まり、10月には、英国内のヘイトクライム賞2017 (No2H8 Crime Awards 2017) のイベントで、ジョー・コックス賞 (The Jo Cox Award:労働党下院議員ジョー・コックスが、ブレグジットの国民投票の直前に極右の過激派によって殺害された後に名づけられた) を受賞しました。
「私たちが新聞を取り上げるのは、政治的理由ではありません」と、ストップファンディングヘイトの共同設立者であるリチャード・ウィルソン (Richard Wilson) 氏は当誌に語りました。「ヘイトを煽り、組織的に差別を行い、結果として国連から非難されている3紙だからこそ取り上げているのです」
「多くの保守派の大物が、『Daily Mail』の虐待的姿勢について話題にしていることはわかっています。これは右か左かではなく、善いか悪いかの問題なのです」
ウィルソン氏は、2016年の夏に友人たちと活動を開始。ヘイトクライムの増加に肩を押されました。ウィルソン氏らは、ヘイトクライムはメディアによる移住者についての否定的な見出しに関係があると感じていました。「さらにひどくなっているように思われたのです」とウィルソン氏。「ヘイトクライムが広く議論されるようになって来ても、こうしたタブロイド紙は虐待的な物言いを止めませんでした。それで、何をすれば目を覚まさせることができるのだろう?と考えたのです」 そこで、彼らはタブロイド紙の収入に着目することに決めました。
出版物の売上が減少、読者は記事がオンライン上で無料配信されることを期待し、定期購読料を支払う読者が少なくなることで、多くの報道団体は、自分たちのウェブサイトを見てもらえるよう刺激的な内容の「クリックベイト」記事を発信し始めました。ページの閲覧数が増えれば増えるほど、そのページへ広告を載せたいと思う企業が増えるようになるのです。
「善良な人たちを怒らせることになる発言をするためだけに存在する特定タイプのコメンテイターがいるところでは、実に奇妙な現象が見られます。怒りと非難を浴びることで出番が増える」とウィルソン氏。「それが結果として広告収入を上げるのです。とてもネガティブなものが売れる場所で作られたシステムであり、ネガティブなものがさらに売れるようにする技術です」
フェイスブックで20万人以上、ツイッターで8万人近くいる支持者を通じ、ストップファンディングヘイトは、「The Sun」や「MailOnline」、「Daily Express」の差別的記事のスクリーンショットをとり、記事の横にある広告主のタグ付けを勧めています。「企業にとって、オンラインの広告を取り下げることは比較的簡単です」とウィルソン氏。「オンライン広告の仕組みは、大体、取り下げたサイトを避けて広告を配信するだけ。例えば、あなたが「MailOnline」をブラックリストに載せたら、広告システムは他のサイトからあなたを見つけるでしょう」
スクリーンショットを撮ることで、そのサイトの「閲覧」数を上げたとしても、広告主が広告プログラムからそのサイトを外す影響の方が通常は大きく、長い目で見れば特にそうだとウィルソン氏は言います。
最近の成功の1つは、ダービー大学 (Derby University) が「MailOnline」上に広告が出ないようにすると発表したことです。英国国会でのセクシャルハラスメントと性的虐待について行われた最近の申立てをけなす記事の横に、同大学のブランディングが出ていたと、ストップファンディングヘイトの支持者が指摘した後のことでした。
同団体は、こうした成果を上げた方法を、世界中の志を共にする組織と分かち合っています。その1つが、アメリカに拠点を置く団体のスリーピングジャイアンツ (Sleeping Giants)で、右派のニュースサイトである「Breitbart(ブライトバート)」 から広告を引き上げるよう3,500近くもの広告主に働きかけています。
今号が印刷に回される時点で、2017年のクリスマスは今にも賑わいを見せそうです。ストップファンディングヘイトは、お祝いの季節に間に合わせるように、タブロイド紙に広告を出している企業の対照表を出そうと、クラウンドファンディングのキャンペーンを通して非営利団体のエシカルコンシューマーと協働しています。また、2分間の動画を提出する学生対象のコンペティションにも着手。お題は、なぜ携帯電話のプロバイダーは「Daily Mail」、「Daily Express」、「The Sun」への広告提供をやめなければならないのか。ウィルソン氏は言います。「クリスマスは自分たちの商品を売るだけではなく、人にやさしくするという意味合いがあるのだと、人々に思い出して欲しいのです」
ストップファンディングヘイトのクリスマスキャンペーンの詳細は、同団体のフェイスブックページ facebook.com/stopfundinghate/ をご覧下さい。動画コンペティションについてはこちら https://stopfundinghate.org.uk/get-involved/filmcompetition/。締め切りは2018年1月12日。
マリアンヌ・ブラウンは「Resurgence & Ecologist」の副編集長。
Stop Funding Hate • Marianne Brown
306: Jan/Feb 2018
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