COP26に向けた信仰と科学
サティシュ・クマールは気候変動の問題を扱うために信仰の指導者と科学者を集める目的で開催されたバチカン会議について、彼の考えを語る。
翻訳:舘林 愛
気候危機は、世界に、人間と自然との関係を深く調査することを余儀なくしています。2021年11月にグラスゴーで開催されたCOP26(国連気候変動枠組条約第26回締約国会議)は、世界の政治指導者が一堂に会し、人類の産業活動によって引き起こされた危機に対処する機会でした。
気候変動の真の原因は、無限の経済成長と物質的な繁栄に対する際限のない人間の欲望であり、それは大量の廃棄物、汚染、および大気中への炭素排出につながります。したがって、気候危機は道徳的・精神的な危機でもあるのです。
人類の、この問題ある窮状に対処するため、教皇フランシスコは、世界の宗教指導者と一流の科学者をバチカンに招待し、彼らが声を揃えて語ることで、グラスゴーに集う世界の政治指導者たちに、気候の大惨事の問題を真剣に取り上げ、偏狭な国益を超えて、私たちの共通の家である貴重な惑星、地球を保護するために協力するよう促しました。
2021年10月4日にバチカンで開催された会議には、キリスト教徒、仏教徒、イスラム教徒、シーク教徒、ユダヤ教徒、ジャイナ教徒のコミュニティの代表者と、多くの一流の科学者ら、私を含め65名が参加しました。ジャイナ教の代表として、この名誉ある集まりに招待されたことを嬉しく思っています。
バチカンで最も美しい部屋のふたつで、教皇フランシスコや他の宗教指導者たちと、このように親密な関係を築くことができて光栄でした。それぞれの精神的な伝統の繋がりを探求し、お互いの意見を交わすことが出来ました。私はアヒンサー(Ahimsa)[非暴力]の重要性、または気候危機の文脈における非暴力について話をしました。ジャイナ教の伝統において、最も崇高な原則は非暴力であり、それは私たち自身に向けての非暴力、そして他者と自然に向けての非暴力なのです。これは、私たちが生き残るためには、全ての人が取り入れるべき非常に重要な原則なのです。「害を及ぼさない」というヒポクラテスの誓いを立てるべきなのです。汚染や廃棄物は自然に対する暴力です。自然を傷つけ、損なうことで、私たちは自らを傷つけ、損ないます。異なった考え方を始める必要があります。
この会議は、バチカンと英国大使館、そしてイタリア大使館と教皇庁の共催で行われました。教皇フランシスコが聴衆の中で、私の話に耳を傾けてくださることは光栄でした。会議に続いて、私たちは英国大使公邸でベジタリアンの夕食を楽しみました。数年前は英国大使館で全くのベジタリアンディナーを食すことなど、考えにも及びませんでした。時代は変化し、人々は気候変動危機に対応しつつあります。また、会議の同席者、グラスゴーのCOP26の議長であるアロック・シャルマ(Alok Sharma)やカンタベリー大主教のジャスティン・ウェルビー(Justin Welby)に出会えたことは喜びでした。
これほど多くの宗教指導者や、科学者が、気候危機に対処するために一致団結して語るのを見ることは素晴らしいものでした。この会議の基本的なメッセージは、信仰の指導者、政治の指導者、科学者など、私たちすべてが、政治的であれ神学的であれ、ささいな違いを超えて立ち上がる必要があり、私たち共通の家である地球を大切にするという共有の利益のために協力する必要があるということでした。
私たちの家は燃えています。手遅れになる前に、この火を消すためにあらゆることをしましょう。
2021年10月4日にバチカンで開催された「信仰と科学、COP26に向けて」会議で行われたサティ・シュクマールの講演をここでご覧いただけます。 vimeo.com/646479560
サティシュ・クマールはリサージェンス&エコノミスト誌の名誉編集長。
Article - Faith And Science Towards Cop26 • Satish Kumar
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