人類はひとつ、みんなの未来


本誌300号に際し、分断された世界の中で共感のために新年のお願い。


翻訳:坂井 晴香


 本誌リサージェンス&エコロジストが発行されようとしていた頃、 アメリカ大統領選挙の結果は依然として世界中に波紋を呼んでいまし た。心をかき乱すほどの敵意(全ての立場において)や偏見と偏狭の 火を焚きつけた発言で特徴付けられた遊説の後、ドナルド・トランプ の勝利は多くの評論家によって不信感をもって迎えられました。ある 意味では、6月のイギリスの国民投票の結果と類似点がありました。 EUを離脱するという支持が僅かに多数を占め、主流の政治やメディ アにおいて影響を与える立場にある多くの評論家を驚かせました。 このコラムはいずれかの投票の政治について論議するつもりはあり ません。本誌はどの政党とも政治的協定を結んでいません。しかしな がら、思い当たるのは、多くの評論家の両方の投票に関する公約の誤 りで、彼らは全く共感できない人たちを理解できませんでした。

それが良い根拠となるのですが、今号の基本理念コーナーの特集 は、哲学者で活動家のローマン・カツァナリックがより大きな共感を 発展させるよう私たちへ嘆願しています。共感がなければ、他者の生 活や考えや感情を理解しようとする努力が妨げられます。その代わり に彼らを(私たちの恐怖や偏見や不信感を投影する)「他者」として 捉えるあらゆる危険があります。 共感なしに、私たちは見解の一致点を見つけられそうにもなく、ま た新たな政治的合意へ達することもできません。気候変動という現実 に対してトランプは歯牙にもかけないことで、彼は環境活動家に慕わ れないかもしれませんが、だからといって環境専門家がトランプの支 持者である失業中の炭鉱業者の苦境を理解する妨となってはなりませ ん。私たちの社会がより分断され、私たちの世界がより危険になるの を避けるべきだとすれば、新たな政治的共感が求められます。 ベトナム人仏教僧であり、執筆者、教師でもあるティク・ナット・ ハンは(今号でクリスティン・トーメにより新たな人物紹介の対象と なっていますが)、そのようなアプローチの好例となっている生活を する人たちの一人です。

ティク・ナット・ハンはマインドフルネス(新たな信者を獲得し、 仏教徒の指針と禅修行へと魅了する実践手法)の父として知られてい ます。しかし、世界の注目を集めた最初の行いとは — 勇気付けられ た Dr.マーチン・ルーサー・キングがノーベル平和賞の理想的な候補 者は彼だと強く主張しましたが — 1950~60年代に起きたベトナム戦 争の荒廃の中で動き回り、抗争の最中の両者の理解と話し合いに必要 だった活動です。 先日ノーベル文学賞を受賞した、ボブ・ディランの画像がじっと見 つめているポスターは、ロンドンのヴィクトリア&アルバート博物館 の「You Say You Want a Revolution」という展示のもので、芸術のペー ジで論評しています。より広く社会的かつ政治的な背景を見出す前に、 展示のサブタイトル「Records and Rebels 1966–1970」はその時代の反 文化的音楽やミュージシャンにまず焦点を当てています。 著名な専門家による立場と発言が重要であると言うのは大げさで批 判の的となり得ますが、マーケティングの観点から鋭いと言うことが できます。しかし、これは、リサージェンスが生まれた時代のことで あり、そして2016年で50周年を迎えることが、当初から今まで私たち の信奉している大義(平和、社会正義、自然の中での私たちの居場所 を理解することを通じた環境の保全、人間の精神の解放)の永続的な 妥当性の証であればと願っています。 50周年の後にもう一つの重要な出来事があります。この300号で す。私たちは新年を待ちわびていましたので、メッセージをくれた全 ての方に感謝しています。その返礼として、リサージェンスのメッセー ジへの誓いを新たにします。 私たちは全ての読者が2017年を穏やかに過ごし、より良く読むこと ができることを祈っています。

グレッグ・ニール

編集長


リサージェンス&エコロジストは教育慈善団体のリサージェンストラストが発行。詳しくは裏表紙の内側やウェ ブ www.resurgence.org をご参照ください。コラムで述べられる見識は寄稿者のもので、必ずしも当トラストを反 映したものではないこともあります。

300 : Jan/Feb 2017

リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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