舗装道路の雑草の世界

アマンダ・トゥークはロンドンで植物散歩に出かける。

翻訳:馬場 汐梨

2020 年の春、私は舗装道路の植物に気付き始めました。私たちの地域の郊外の森は訪問客でいっぱいで、自然保護区への旅行は無責任に感じられたので、代わりに南ロンドンのロックダウンされた道を歩きました。そのシンプルなリズムが頭をすっきりさせてくれましたが、私はだんだん道に生えている木々や日和見の雑草の細部に意識が向いていきました。後者は自治体の慈悲深い放置により恩恵を受けています。私は識別できる花に挨拶し、識別できない花の写真を撮りました。そしてその花たちに思いを巡らせました。

 7 ヶ月たちました。このストリータムの目立たない 1950 年代の住宅団地では、美しさは、ただちに浮かぶ言葉ではありませんが、この暖かい秋の朝に探しているものです。私は植物学者のロイ・ヴィックリーとその他数人に会って、団地の道路に咲く雑草を楽しむところです。ヴィックリーは 35 年以上都市の植物愛好家に知識を共有しており、私は今日専門家と出かけるのを特に楽しみにしています。

 「私の植物散歩は主に都市の共有地や共有墓地ですが、数年前にこの辺りの散歩を導きはじめたのです」と彼は教えてくれました。

 足元を見ながら、私たちは入念にその団地を歩き、進むにつれて雑草を識別したりリスト化したりします。穏やかな気温の恩恵を受けているのか花々がまだ咲いています。多くの都市が経験している都市のヒートアイランドの影響です。

 ここには植物の区別はありません。私たちは、野生の植物と庭園からやってきた植物の美しさと、ヴィックリーが話してくれるそれらについての話を同じように楽しむことができます。まず控えめな黄緑のノボロギクの花を見つけます。これは、ヴィクトリア時代に貧しい人々がケージ飼いの鳥の餌として売るために集めていたものです。そして一角には、密集したアルカンナのかたまりが繁っていますが、これは 18 世紀に庭園からやってきたムラサキ科の一群です。道の端に点在している鮮やかな黄色い Catsear[ネコの耳の意:和名はブタナ]は、小さな葉のような苞が茎を包んでいるさまがその名の由来になっています。ぽつんと咲くイヌホオズキはフェンスで護られているようで、その白と黄色の花の形は黒い果実のコントラストとなっていて、ナス科の植物なのだということがわかります。

 私は、(エドワード・ソールズベリーが第二次世界大戦の空襲跡地に植えた植物から、自分たちが見つけた雑草についてブログに書く今日のストリート植物学者に至るまでの)ロンドンの植物愛好家が都市の雑草を大切にしてきた長い伝統の一端です。2020 年の初め、ソーシャルメディア植物学者で、都市の植物の情熱的な支持者であるソフィー・レグイユ(Sophie Leguil)が「More than Weeds」という活動を立ち上げました。パリでの雑草に名前を書き示す活動に刺激され、無脊椎動物にとっての舗装道路に咲く植物の重要性を強調し、道路にグリホサートの除草剤を使用することに反対してきました。あるオンラインでの会話に参加した後、彼女がロンドンで最も面白いと思った舗装道路に咲く植物は何かと尋ねました。

 「ポンポンのような可愛らしい花をつける草で、ウサギノオと呼ばれる庭園植物です」と彼女は答えてくれました。「おかげで笑顔になれました。私は植物学者ですが、皆さんは常に科学的な方法で植物を見る必要はないのです」

ー 中略 ー

アマンダ・トゥーク(Amanda Tuke)は南ロンドンの郊外の自然に拠点を置く自然環境のライター兼ブロガー。

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リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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