フェンスで囲い込まれて

農業を改革するには、より大きく全体像を見なければならな いとコリン・タッジが執筆。

翻訳:馬場 汐梨

 私たちの祖先にとって、そして現代の多くの人々にとって、土地と手つかずの大自然 は、神や神々からの贈り物もしくは借り物で、至上の尊敬をもって扱うべきだと一般的 に考えられてきました。封建時代、イギリスの田舎は、ヨーロッパ大陸のほとんどと同 じく、田舎でしたが「開かれて」いてフェンスや垣根で分割されてはいませんでした。

 しかし 15 世紀以降徐々に裕福で有力な個人が各地域を包囲する権利を与えられ、周りをフェンスで囲い、その土地 が自分のものだとはっきり訴えるようになりました。その全体のプロセスは議会の一連の法令によって強化されていました。

 囲い込みの不当さは、資本主義が本領を発揮し、土地が他のものと同様徐々に商品となっていった 19 世紀を通し て悪化しました。特に管轄外の土地については、土地が所有されるなどとは全く考えない人々からただ同然で買われ、数年後に莫大な金額で売られていました。土地は時には法的所有者が(農場の建物を建てることなどにより)実 践的な、商業的な意味でその価値を高めることもありましたが、多くの場合所有者が何の努力もせずに価格が上がり ました。例えば当事者でない第三者が近くに鉄道を敷いたり町を築いた時です。こうして、名義上の所有者は運や他 人の努力によってひたすら金持ちになっていくのです。これがどうして賢明だと、公平だと言えるでしょうか? さら に悪いことには、土地自体のコストが上がると、それに伴ってそこに建つものすべてのコストが上がります。イギリ スの現在の農場は平均して 1 エーカーあたり 10,000 ポンドか、1 ヘクタールあたり 25,000 ポンドです。イギリスでは 農家の新しい世代が必要とされています。新しいビジネスを始めるにはとても大変で(農業は特に難しいでしょう) 巨大な抵当権額、つまり巨大な負債がそれをより難しくさせます。 建物を建てるための土地の金額は計り知れず、これが住宅価格のインフレを起こしています。私の娘の一人と夫が 南ロンドンに所有している家は現在 700,000 ポンドほどの価値がついていますが、これは私と妻が 1960 年代後半にほ とんど同じような家に払った金額の 100 倍を超えています。住宅価格は、1980 年あたりにマーガレット・サッチャー が決定をし、公的に建てられて所有されていた「公営」住宅を同等な代替えもせず売り払ったことによりさらにイン フレが進みました。そのため、現在も慢性的に住宅が不足しています。慢性的な不足は、何人かの評論家が指摘する ように、デビアスがダイアモンドの供給を制限するのと同じ方法と理由で、土地の価格を高くキープするための意図的な策略です。コストは希少性と関係しています。この戦略は不動産の管理人や銀行業者にとって非常に利益になり ますが、社会的には大変有害です。イギリスの人々は共通して、収入の 30~50% を住むところに払うことを余儀なくされており、これは本質的におかしなことで、しかも多くの場合暮らすためにはほとんど何も残りません。しかしこ れは避けられないことでは全くありません。すべての国々でこうではありませんし、ここ英国でもずっとこうだった

。。。中略 。。。

これは『 The Great Re-think: A 21st-Century Renaissance(すごい再考:21 世紀のルネッサンス)』(Pari Publishing 2021 年)から編集抜粋されたものです。コリンは 2 月 17 日午後 7 時に、彼の本についてリサージェンス&エコロジ スト誌の編集者であるマリアンヌ・ブラウンと対談します。コリン・タッジは『オックスフォード現実農業会議(Oxford Real Farming Conference)』と『現実農業と食文化大学(The College for Real Farming and Food Culture)』の 共同設立者です。www.resurgence.org/bookclub

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リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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