新年の挨拶

翻訳:沓名 輝政

 米国でジョー・バイデンが当選したことで、容赦なく悪いニュースの代名詞となった一年が、より前向きな印象で締めくくられ、 環境保護活動家たちは一息つくことができました。次期大統領はトランプ政権時代の環境規制への攻撃を撤回し、国連パリ協定に 再加盟する意向を示しましたが、それは非常に困難な作業となるでしょう。「パリ協定への再加盟は、紙切れにサインを入れるの と同じくらい難しい」とクリスティアナ・フィゲレスは彼女のポッドキャスト『Outrage and Optimism』で語っています。「私た ちが話しているのはそういうことではありません。私たちが話しているのは、他のほとんどの先進国がすでに歩んでいる脱炭素化 の道に戻るように、アメリカ経済にどのようなきっかけを与えるかということなのです」。ですから、子供たちのために、生きて いける未来を確保したいと願う全ての人にとって、私たちが向かうべき持ち場に戻るということです。 一方で、コミュニティは、コロナ禍の影響で仕事を失う人が増えているため、隣人をサポートするためにこれまで以上に懸命に 働いています。デボン州の私の町では、カフェが地元のフードバンクと協力して、困っている人たちに食事を届けています。より 多くの地元企業は、これまで以上に機器や食品、お金を寄付しているとカフェのオーナーのレベッカは私に言いました。「人々は 現時点で無力感を感じているので、他の人を助けたいと思っています。彼らの時間やお金を捧げることは、人々が対処するのに役 立ちますので、双方向のものとなるのです」。パンデミックが示しているように、私たちのつながりは、最も困難な状況にも耐え うる回復力のあるセーフティネットを織りなしているのです。

 このことを念頭に置いて、今号のリサージェンス & エコロジスト誌では、ロンドンからジンバブエまで、世界中のコミュニティ を訪問し、文化、気候、歴史の違いにもかかわらず、人々が不確実性の中でどのようにレジリエンスを構築しているかを探ります。 キッチンで一緒に楽しんだり、伝統的な穀物を持ち帰ったり、生態系の回復キャンプを企画したりと、人と人、そして人と自然とのつながりが鍵を握っています。

 また今号では、Oxford Real Farming Conference(オックスフォード・リアル・ファーミング会議)の共同創設者であるコリン・タッジがフードバンクと土地所有権の関係を探り、アン・ベアリングが 4 千年前にさかのぼり、大いなる母の崇拝が大いなる 父の崇拝に取って代わられた時代と、それが人類の未来にもたらした悲惨な結末を紹介しています。ソーシャルディスタンスを背 景に、サティシュ・クマールは与える精神について考えます。

 2020 年の多くは、その暗い軌跡で知られていましたが、2021 年は今ここにあります。私たちにはより良い未来を築くために必要な手立てがあります。さあ、共に手立てを活かしてコツコツ進めましょう。

マリアン・ブラウン は、リサージェンス&エコロジスト誌の編集者です。

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リサージェンス & エコロジスト 日本版

リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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