鳥の目に映る景色

ジャッキー・モリスは鳥へのラブソングがどのように鳥類保護を訴える声となるかを説明しています。

翻訳:馬場 汐梨

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The Birds They Sang: Birds and People in Life and Art

(仮訳)鳥たちは歌う:生活と芸術における鳥と人間

スタニスラフ・ウゥビェンスキ (Stanisław Łubieński) 著 

The Westbourne Press、2020年

ISBN:9781908906366

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世の中には鳥に「よく会い」鳥を尊重している人と、ミソサザイの鳴き声を聞くことなく人生を送り、この惑星を共有している鳥たちに注意を払うことがない人がいます。私は鳥の姿を愛しそびれているこれらの人々を理解することができません。

 『鳥たちは歌う』は私にポーランドのバードウォッチャー、スタニスワフ・ウゥビェンスキ (Stanisław Łubieński

) を紹介してくれ、彼の著述を通して新たな鳥類の不思議に導かれました。この本は、この本ならではの、鳥へのラブソングです。鳥たちの生活と人間の生活が絡み合う空間を巡るものです。著者がアルブレヒト・デューラーの小さなフクロウの絵について語るまさに冒頭(彼自身が鳥を愛していると語る部分)から、チェウモンスキ― (Chelmoński) の作品や、モーツァルトのペットであるホシムクドリに関連して音楽へ、そして J・A・ベイカーの著述まで、この本は芸術を賛美するものです。この本は翼が動くのを見て心躍る私たちのような人たちのためだけの本ではなく、鳥たちの美しさにまだ気づいていない人たちにこの鳥の世界を拓き得るものでもあります。最高のネイチャーライティングで、人間と鳥、町、公園や地方をタペストリーに織り込み、ページから歌声が聞こえてくるようです。

 この本はタイムトラベルし、捕虜と鳥の関わり合い、また、看守とのそれを探っていきます。ますます人間の圧力の下におかれていく鳥や他の野生動物にとって、町の公園や都市の景観の重要性を述べています。ハヤブサ属が都心のビルの「絶壁」に巣作りしたり、スズメ目の鳥が低木や建物の敷地に休憩場所を見つけることについて書いています。中世から現代に渡って鳥やその移動についての神話や誤解を扱っていますが — 小さい個々の鳥が、本能や星や世界の匂いに導かれて、何世紀にもわたり存在する飛行経路を通ってそれだけ遠くまで旅することができるというのはただただ素晴らしいことではないでしょうか。

 そのような驚嘆の念や、この生き物に対する畏怖が、この本のページに編み込まれており、それを読むことで元気になります。しかしこの本が感傷的な作品であるなどと思い違いをしてはいけません。ウゥビェンスキは恐ろしい真実にも光を投げかけています。まず、最小のキクイダタキから優雅なツルや巨大な鷲まで鳥類の絶対的で奇跡的な美しさをより深く見る手助けをしてくれ、その後に闇を明らかにします。ドードーとその絶滅の物語から、最後と考えられているリョコウバトのマーサの絶滅の物語、エスキモーのダイシャクシギの胸の張り裂けるような物語まで、私たちがとがめられるべき喪失への怒りと憤りが湧き始めます。

 そして私がそれまで見そびれていて、注意を払っていなかった違う種類の生き物に光が当てられます。それは喜びのため、スポーツのために鳥を殺すものたちです。最後の章は武器に関わる破壊的な叫びで、鳥に対する戦争に見られる私たち人類の恐ろしさや残酷さに遅くなりすぎないうちに気付かせるものです。ウタツグミからホオジロまで、大量の鳥を殺している網や発砲、毒殺に光を当てています。その数は私の想像を絶するものでした。

 『鳥は歌う』を読めば、この生き物をもう一度大好きになるでしょう。そしてまた、この貴重な残りの鳥を助けるためにほとんど何もしないままでいれば失ってしまうということを人々が認識する助けとなることでしょう。それは心の歌と賛美歌、ときの声が一つになっていて、元のポーランド語がビル・ジョンストンにより美しく[英語に]翻訳されており、言及された鳥類がいくつか白黒のイラストで描かれています。

 私たちは喪失に耐え忍んでいます。怒りをもって変化を起こすときです。

ジャッキー・モリス (Jackie Morris) は芸術家でライターです。www.jackiemorris.co.uk


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リサージェンス誌は、スモール・イズ・ビューティフルを提唱したE.F.シューマッハらが始めた社会変革雑誌で、サティシュ・クマールさんが主幹。英国で創刊50年、世界20カ国に読者4万人。環境運動の第一線で活躍するリーダーたちの、よりよい未来への提言で、考える糧を読者にお届け。また、詩や絵などのアートに溢れているのも特徴。

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